東南アジア経済の勢力図が、世界的な情勢の変化を受けて大きく塗り替えられようとしています。2019年11月18日、タイ政府が発表した2019年7月から9月期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比で2.4%を記録しました。これは同年4月から6月期の2.3%からは微増したものの、かつての勢いを知る者にとっては物足りなさが残る数字と言わざるを得ません。
この背景には、深刻化する米中貿易摩擦の影響があります。製造業が集積するタイにとって、輸出の伸び悩みは経済の体温を下げる大きな要因となっているのです。SNS上では「かつての製造業大国タイの陰りを感じる」「ベトナムの勢いと対照的だ」といった、冷静に情勢を分析する声が目立っています。
製造業の移転先として輝くベトナムの圧倒的成長
一方で、今まさに「勝ち組」として独走態勢に入っているのがベトナムです。同国の2019年7月から9月期の成長率は、驚異の7.31%に達しました。これは、中国からの生産拠点移管、いわゆる「チャイナ・プラス・ワン」の動きを完璧に捉えた結果と言えるでしょう。中国からアメリカへの輸出が困難になる中、ベトナムは代替の輸出拠点として存在感を増しています。
ここで言う「実質GDP(国内総生産)」とは、一国内で生み出された付加価値の合計から物価変動の影響を除いた、経済の地力を示す指標です。ベトナムはこの数値において、前四半期の6.73%からさらに加速しており、東南アジアの中でも突出した熱気に包まれています。対米輸出を戦略的に伸ばしたことが、見事に経済成長のエンジンとなりました。
対照的に、マレーシアやシンガポールの表情は明るくありません。マレーシアの2019年7月から9月期の成長率は4.4%となり、直前の四半期から減速しました。中国や近隣諸国への輸出停滞が、じわじわと経済の足を引っ張っている状況です。かつてアジア経済を牽引した国々が、グローバルな需要の冷え込みに直面している姿が浮き彫りになっています。
2020年に向けた明暗と投資の未来
国際通貨基金(IMF)が2019年10月に発表した予測でも、今後の格差はさらに広がるとの見通しが示されました。2020年の成長率予測において、タイは3%、シンガポールはわずか1%へと下方修正されています。一方で、ベトナムは6.5%という高い水準を維持しており、製造業を惹きつける魅力が短期間で衰えることはなさそうです。
編集部としては、この「ベトナム一強」とも呼べる現状に、周辺諸国がどう対抗していくかに注目しています。タイでは政府支出が経済を下支えしていますが、個人消費の伸び悩みは製造業の賃金低下が原因であり、構造的な課題は深刻です。単なる工場の移転先争いではなく、いかに高付加価値な産業を育成できるかが、今後の勝敗を分けるでしょう。
投資家やビジネスマンにとって、今の東南アジアは一つのまとまりではなく、国ごとに明確な「濃淡」があるマーケットだと認識すべきです。ベトナムの躍進を好機と捉えるか、あるいはタイの巻き返しに期待するか。2019年末を迎え、アジア経済の主役交代が加速する中で、私たちはその歴史的な分岐点に立ち会っているのかもしれません。
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