2019年12月28日現在の社債市場では、これまでの「何でも買い」という熱狂から一転し、投資家たちが慎重に銘柄を見極める「選別」の動きが鮮明になっています。市場全体を見渡せば、債券を買いたいという需要が供給を上回る好需給が続いていますが、その裏側では格付けの低い社債に対して厳しい視線が注がれているのです。
通常、社債の利回りと国債の利回りの差は「スプレッド(上乗せ金利)」と呼ばれます。この数値は、企業の倒産リスクなどに対する「プレミアム」を意味しますが、最近では格付けの高いダブルAやシングルAの社債でスプレッドが縮小する一方で、トリプルB以下の社債はほぼ横ばいの状態が続いており、投資家の警戒感が浮き彫りになっています。
この状況について、大手生命保険会社の運用担当者は「低格付けの社債には選別的な投資を行っている」と本音を漏らしています。2019年8月を底に国債利回りは上昇に転じたものの、依然として低い水準にあります。収益を確保するために社債への投資は避けられませんが、だからといってリスクの高い銘柄にまで手を出せる状況ではないというのが実情でしょう。
投資家がこれほどまでに神経質になっている背景には、企業業績の悪化という影が忍び寄っていることがあります。2019年4月から9月期の決算では、多くの企業が業績の下方修正を発表しました。米中貿易摩擦の影響で企業の設備投資が冷え込んでおり、経済の基礎的条件である「ファンダメンタルズ」の悪化を、需給の良さが覆い隠しているに過ぎないのです。
そのリスクが現実のものとなった象徴的な出来事が、2019年11月1日に発表された三井E&Sホールディングスの赤字転落です。海外事業での巨額損失を受け、格付けが引き下げられると、同社の社債価格は一気に急落しました。SNS上でも「高利回りに釣られる怖さを痛感した」といった驚きと不安の声が広がり、リスクへの感度が急速に高まっています。
私は、現在の市場は「利回り飢餓」による盲目的な投資と、冷静なリスク回避の狭間にあると感じています。格付け会社による評価も、以前に比べて「格下げ」の割合が増えており、景気の減速傾向は無視できません。いくら需給が良好だとしても、企業の稼ぐ力が衰えてしまえば、その社債は砂上の楼閣になりかねないからです。
2019年11月の調査では、依然として6割の投資家が「社債」を注目の投資対象に挙げています。しかし、超低金利が長く続く中で「利回りさえあれば何でもいい」という思考停止に陥ることは非常に危険です。一部の賢明な投資家が示している慎重な姿勢こそが、2020年を目前にした今、私たちに最も必要な教訓であると私は確信しています。
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