中東の民主主義国家イスラエルが、出口の見えない政治的迷路に迷い込んでいます。2019年12月11日、同国の国会は首相候補を一本化できず、ついに解散を選択しました。これにより、2020年3月2日にわずか1年間で3回目という前代未聞の総選挙が実施される見通しとなったのです。SNS上では「また選挙か」「税金の無駄遣いだ」と嘆く声が溢れる一方で、現政権への根強い支持と変革を求める声が激しく火花を散らしています。
混迷の背景には、2019年9月の総選挙後に行われた組閣作業の難航があります。現職のベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる右派「リクード」と、ベニー・ガンツ氏率いる中道野党連合「青と白」という二大勢力が、どちらも政権運営に必要な過半数の議席を確保できませんでした。この膠着状態を打破するために大連立、つまり主要政党が協力して政権を作る道も模索されましたが、両者の歩み寄りは果たせませんでした。
汚職疑惑とプライドがぶつかり合う政権争い
決定的な亀裂を生んだのは、ネタニヤフ首相を巡るスキャンダルです。2019年11月21日、検察当局は彼を収賄罪などで起訴しました。「起訴された人間が国を率いるべきではない」と主張するガンツ氏は、自身が先に首相を務める交代制を提案したものの、ネタニヤフ氏側はこれを拒否しました。リクード党内でも首相への支持は固く、妥協の余地は見出せませんでした。一国のリーダーの進退が、国家の機能を停滞させている現状は極めて深刻と言えるでしょう。
イスラエルの選挙制度は「完全比例代表制」を採用しており、多くの小政党が乱立しやすい仕組みです。そのため、一つの政党が単独で過半数を取ることは極めて難しく、常に連立交渉が鍵を握ります。しかし、現在の対立は単なる政策の違いを超え、ネタニヤフ氏の「続投」か「退陣」かという個人への審判にすり替わっています。これでは国民が求める本質的な政策議論が置き去りにされてしまうのではないかと、私は危惧しています。
2020年3月2日の投開票に向けて、再び激しい選挙戦が始まります。しかし、最新の予測では次回の選挙でも両陣営の勢力は拮抗しており、再び過半数に届かない可能性が指摘されています。もし4度目の選挙などという事態になれば、国民の政治不信はピークに達するでしょう。イスラエルがこの政治的停滞を抜け出し、安定した舵取りを取り戻せるのか。世界中の投資家や外交官が、固唾を呑んでエルサレムの動向を注視しています。
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