世界最大の自動車市場を誇る中国が、次世代モビリティの主導権を握るべく驚くべき方針を打ち出しました。2019年12月3日、中国の工業情報化省は、今後の自動車産業の指針となる「新エネルギー車産業発展計画」の素案を公表したのです。この計画において、2025年における新エネルギー車の販売比率目標を、従来の20%から25%へと大幅に引き上げることが明らかになりました。
ここで注目すべき「新エネルギー車(NEV)」という用語は、中国独自の定義によるものです。これには、電気のみで走る「EV」、家庭用コンセントから充電可能な「PHV」、そして水素をエネルギー源とする「FCV(燃料電池車)」の3種類が含まれます。残念ながら、日本が得意とする一般的なハイブリッド車(HV)はこの枠組みから外れており、今後の中国市場を攻略する上では大きな転換期を迎えつつあります。
ネット上ではこのニュースに対し、「いよいよEVシフトの本気度が違う」「日本メーカーのHV技術はどう扱われるのか」といった、期待と不安が入り混じった声が数多く寄せられています。今回の目標引き上げは、単なる環境対策の枠を超え、欧米を凌駕する「自動車強国」へと駆け上がろうとする習近平指導部の並々ならぬ執念が感じられると言えるでしょう。
急加速するインフラとライドシェアが普及の鍵に
新エネ車の普及を強力に後押ししているのが、中国で爆発的に広まっている「ライドシェア」の存在です。「滴滴出行(ディディ)」などの配車サービスは、今や利用台数が3,000万台規模にまで達しています。多くの地方政府がライドシェアへの新規登録を新エネ車に限定する規制を導入しているため、街を走る車が自然とEVやPHVへと置き換わっていく仕組みが構築されているのです。
現状では補助金の減額によって一時的に販売ペースが落ち着いているものの、政府は中核部品やシステムの開発を加速させ、世界標準を自国で作り上げる青写真を描いています。私は、この強引とも思えるトップダウンの姿勢こそが、停滞する世界のEV市場に刺激を与え、イノベーションを加速させる原動力になると確信しています。日本企業にとっては厳しい試練ですが、これを機に更なる技術革新が生まれるはずです。
実際に、日本勢もこの巨大な波に乗り遅れまいと動き出しています。トヨタ自動車は2019年11月の広州モーターショーにて、高級ブランド「レクサス」初となる量産型EVを世界初公開しました。HVで培った高度な電動化技術をPHVやEVへと応用し、米テスラや独フォルクスワーゲン、そして勢いづく現地メーカーとの激しいシェア争いに挑む構えを見せています。
自動運転レベル4の実用化も見据えた次世代の競争へ
今回の素案で驚かされたのは、環境規制だけでなく自動運転技術についても具体的な目標が掲げられた点です。2025年までに特定の条件下で完全無人運転が可能となる「レベル4」の実用化を目指すとしています。これは、車というハードウェアの販売だけでなく、移動サービスそのものを国家戦略としてアップグレードしようとする姿勢の現れに他なりません。
世界に目を向ければ、欧州では2021年から厳格な二酸化炭素排出規制が始まりますし、日本国内でも2030年度に向けた新しい燃費基準の導入が予定されています。もはや、環境対応は「選択肢」ではなく、自動車メーカーが生き残るための「絶対条件」となりました。独自の進化を遂げる中国市場の動向は、今後も私たちのカーライフに大きな影響を与え続けるに違いありません。
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