墨田区のシンボルとも言える「東京楽天地」の勢いが止まりません。2019年12月5日の株式市場において、同社の株価は一時、前日比5%(300円)高の6520円を記録し、なんと約13年9カ月ぶりという高水準に達しました。終値も3%高の6380円と堅調で、売買代金は前日の約3倍となる1億7000万円まで膨らみ、投資家からの熱い視線が一気に注がれています。
この急騰の背景には、2019年12月4日に発表された2019年2月から10月期の決算が非常に優秀だったことが挙げられます。売上高は前年同期比で17%増の82億円、そして驚くべきことに純利益は2.5倍の9億4600万円という驚異的な伸びを達成しました。さらに、2020年1月期の年間配当を20円増配して80円にするという株主還元策も、買い安心感を誘ったようです。
SNS上では「錦糸町が変わった」「パルコができてから街の雰囲気が明るくなった」といったポジティブな声が多く見受けられます。かつての錦糸町は「大人の歓楽街」というイメージが強かったものの、最近では若者やファミリー層が目立っています。こうした街の変貌が、数字として如実に現れた格好と言えるでしょう。
錦糸町パルコの成功と「天気の子」の追い風
好調の最大の要因は、JR錦糸町駅前にそびえ立つ「楽天地ビル」のリニューアル成功にあります。大規模な改修工事を経て、2019年3月に全館での営業を再開し、核テナントとして若者に人気の「錦糸町PARCO(パルコ)」を迎え入れました。この戦略が見事に当たり、ビル全体の集客力と収益性が飛躍的に向上したことが今回の好決算に繋がっています。
また、同社が運営する「TOHOシネマズ錦糸町」の存在も見逃せません。これは映画興行大手のTOHOシネマズにライセンス料(ブランドやシステムを使うための費用)を支払って運営する形態ですが、2019年は映画界にとって「当たり年」でした。アニメ映画「天気の子」やディズニー実写版「アラジン」といった超大型ヒット作が続いたことも、利益を大きく押し上げたのです。
編集者の視点から見ると、単に「ハコ」を作るだけでなく、パルコのようなトレンド発信地を誘致し、映画という強力なコンテンツを融合させた楽天地の戦略は非常に合理的だと感じます。これまでの錦糸町にはなかった「お洒落な日常」を演出することで、ターゲット層を拡大し、収益の柱を多角化することに成功している点は高く評価できるでしょう。
次なる一手は浅草!インバウンド需要への期待
ただ、市場では慎重な見方も出始めています。株価は2018年末から約33%も上昇しており、専門家からは「映画のヒット効果が落ち着けば、利益確定の売りによる調整が入るのではないか」という懸念の声も聞かれます。右肩上がりの成長が続いている今こそ、次なる成長シナリオが求められる時期に来ていると言えるでしょう。
そんな中、同社は2019年12月4日に新たな勝負の一手を発表しました。観光地として世界的な知名度を誇る「浅草」にある商業ビルの大幅改装です。現在の直営フロアの営業を2020年11月に終了し、新施設へと生まれ変わらせる計画です。新施設の詳細は未定ですが、外国人観光客(インバウンド)がひしめき合う浅草で、どのような価値を提供できるかが注目されます。
錦糸町での成功体験を、浅草という伝統的な場所でどう再現するのか。トレンドを読み解く力を持つ東京楽天地であれば、きっと世界中の観光客を魅了するような、新しいランドマークを創り出してくれるはずです。投資家にとっても、地域住民にとっても、同社の今後の動向からは目が離せそうにありません。
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