2019年12月05日のニューヨーク株式市場は、米中間の貿易協議に対する期待感から、ダウ工業株30種平均が前日比28ドル高と小幅に続伸しました。中国側から「緊密な連絡を保っている」との前向きな発言があったことが投資家心理を支えた形です。しかし、2019年12月15日に控えた対中制裁関税の発動を回避できるかという緊張感は依然として高く、積極的な取引を控える様子見ムードも漂っています。
2019年を振り返ると、米国株は驚異的な強さを見せました。S&P500種株価指数は年初から約24%も上昇しており、特にアップルやマイクロソフトといった巨大IT企業が市場を牽引しています。SNS上でも「GAFA(IT大手4社)を持っていないと波に乗れない」といった声が溢れるほど、ITセクターの独走態勢が目立った一年でした。利下げという「追い風」が吹いたことも、投資家の強気姿勢を後押しした大きな要因と言えるでしょう。
しかし、輝かしい2019年とは裏腹に、2020年のITセクターには暗雲が立ち込めています。大手金融機関のバンクオブアメリカ・メリルリンチは、IT株の投資判断をこれまでの「強気」から「中立」へと引き下げました。これは単なる一時的な調整ではなく、世界経済の構造そのものが「グローバル」から「ローカル」へと、自国利益を優先する形に変質し始めていることに起因しています。
グローバル化の終焉がIT企業の利益を削る理由
米国のIT企業は、これまで海外市場に大きく依存することで成長を遂げてきました。実際、このセクターの売上高の約7割は米国外によるものです。専門用語で「グローバル化」と呼ばれるこの仕組みは、税率の低い国に拠点を置く「節税策」や、安価な労働力を活用した「コスト削減」を可能にしてきました。しかし、昨今の保護貿易や移民制限といった動きは、こうした成功の方程式を根底から揺さぶっています。
さらに深刻なのが、米中対立の本質が「貿易」から「テクノロジーと国家安全保障」へと移行している点です。知的財産権の保護や情報セキュリティの問題は、一朝一夕に解決するものではありません。これはもはや、単なる関税の掛け合いではなく、ハイテク分野における覇権争いへと進化しています。製造拠点を国内へ戻す動きが進めば、IT企業にとってはコスト増という大きな痛みを伴うプロセスになるはずです。
編集者としての視点では、現在のIT株への熱狂には少し注意が必要だと感じています。SNSでは「調整局面は買い場」という楽観論も根強いですが、国家安全保障という政治的な壁は、企業努力だけで乗り越えられるものではありません。2020年は、これまでの「IT最強神話」が本当の試練にさらされる年になるでしょう。投資家は目先の株価だけでなく、地政学リスクという大きな視点を持つことが、これまで以上に求められそうです。
コメント