中国湖北省に位置する武漢地域が、今まさに世界の自動車産業における「台風の目」として急速にその存在感を強めています。かつて沿岸部や長江下流域に集中していた生産拠点の中心地が、内陸へと大きくシフトし始めているのです。2019年12月20日現在、この地は単なる地方都市ではなく、次世代モビリティの聖地へと変貌を遂げようとしています。
象徴的な出来事として、2019年04月にホンダが最新鋭の第3工場を竣工させたことが挙げられます。この拠点には、現地合弁会社である東風本田汽車が約30億元、日本円にして約500億円という巨額の投資を行いました。特筆すべきは、ここではガソリン車だけでなく、電気自動車(EV)などの電動化モデルを柔軟に生産できる体制が整えられている点でしょう。
SNS上では「ホンダの武漢工場、最新設備が凄すぎる」「いよいよ本格的なEVシフトが始まった」といった驚きの声が広がっています。ホンダの八郷隆弘社長は、この武漢拠点を中国国内向けに留めず、物理的な距離の近さを活かした欧州市場への輸出拠点としても検討していると明かしました。この戦略的な視点は、武漢の地理的優位性を再定義するものといえます。
さらに、日産自動車も2020年の稼働を目指して新工場の建設を急ピッチで進めています。こちらも年間20万台規模の生産能力を持つ電動車の主要拠点となる見込みです。世界的な環境規制の強化に伴い、メーカー各社が「NEV(新エネルギー車)」への対応を急ぐ中、武漢はその供給源として不可欠なピースとなっているのは間違いありません。
メガサプライヤーも続々集結!巨大な自動車エコシステムの誕生
完成車メーカーの動きに呼応するように、部品を供給する「サプライヤー」たちの進出も加速しています。2019年08月には、内装部品大手の河西工業が現地での新会社設立を決定しました。同社の渡辺邦幸社長が「産業の重心が広州から武漢を含む北側へシフトしている」と分析するように、業界全体が大きな構造変化の波に乗っている様子が伺えます。
また、プレス部品の分野でも動きは活発です。ユニプレスは2019年夏に新会社を設立し、2021年春の稼働に向けて60億円を投じる計画です。東プレも2019年02月に全額出資の新会社を立ち上げました。武漢から半径300キロメートル圏内には、ルノーやGM、さらに中国独自の民族系メーカーもひしめき合っており、まさに「顧客の宝庫」といえる状態です。
ジェトロの調査によれば、武漢市の自動車生産台数は2017年に約190万台に達し、2012年と比較するとわずか5年で2倍以上に膨れ上がりました。500社を超える部品メーカーの集積に加え、2016年には次世代車開発の国家モデル地域にも選出されています。ここでは最先端の情報通信技術と自動車が融合する、高度なイノベーションが日々生まれています。
私個人の見解としては、武漢の躍進は単なるコスト削減のための内陸移転ではないと感じます。むしろ、BYDなどの新興EVメーカーと伝統的な日系メーカーが同じ土俵で競い合うことで、かつてないスピードで技術革新が進む「共創の場」となっている点が非常に興味深いです。この地を制する者が、今後のアジア、ひいては世界の覇権を握るのかもしれません。
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