2018年7月7日に発生した西日本豪雨は、各地に甚大な爪痕を残しました。愛媛県松山市の沖合に浮かぶ興居島(ごじしま)もその一つで、特産品であるイヨカンなどのミカン栽培が盛んなこの島では、多くの農地や農業施設が被災する事態となりました。島で農業を営む青井秀典さんは、当時の激しい豪雨を振り返り、何よりも大切に育ててきた園地のことが真っ先に頭をよぎったと語ります。農地へと続く大切な道が土砂や倒木によって寸断され、行き来すらできない絶望的な状況だったのです。
こうした危機的な状況を打破するため、愛媛大学大学院で農業経済学を専門とする間々田理彦准教授のチームと地元の農家が手を取り合いました。彼らが進めているのは、農地の早期復旧を目的とした「農業版ハザードマップ」の制作です。ハザードマップとは、災害が発生した際に危険とされる予測エリアや避難場所をまとめた地図のことですが、今回はこれを農業用に特化させました。全国的にも非常に珍しいこの取り組みは、2020年3月末までに一定の成果をまとめる予定で動いています。
この画期的なマップの最大の特徴は、農作業に欠かせない重要な道路が使用頻度などに応じて分かりやすく色分けされている点にあります。これによって、万が一の災害時にもどのルートを優先して修復すべきかが一目で判別できるようになりました。間々田准教授は、修復の優先順位を明確にすることで、復旧に向けた工事をスムーズに進められると、そのメリットを力説します。SNS上でも「農家にとって道は命綱」「このマップがあれば効率よく動けそう」と、応援の声が多数寄せられています。
さらに、この地図には西日本豪雨の際に土砂崩れや通行止めが発生した110カ所以上の詳細なデータも記録されました。被害の全体像が見えにくい混乱期であっても、過去の事例を参考にしながら安全に行動するための指針になります。加えて、復旧作業に不可欠な重機の配置場所も明記されました。プロの専門業者や地元住民だけでなく、応援に駆けつけるボランティアの人々が活用することも想定されており、非常に実用性の高い設計がなされている点が見事です。
地域の絆を深める工夫として、地図には「マチュピチュ」といった、地元の人々が普段から愛着を持って使っている独特の地名呼び名もそのまま記載されています。島外から来た人々とのスムーズな情報共有にも一役買いそうですね。間々田准教授は、今回の作成手法が確立されれば、興居島だけでなく全国の他の被災地域でも応用が可能になると展望を語っています。地域の基盤である農業を守り、次の世代へ繋ぐためのこの先進的な試みを、今後も熱く見守っていきたいものです。
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