会社員の5人に1人が加入している「企業型確定拠出年金(DC)」。老後の資産形成において極めて重要な制度ですが、実は企業ごとに選べる商品の質に激しい格差があることをご存じでしょうか。運用の成果によって将来受け取れる年金額が変動する仕組みであるにもかかわらず、多くの企業で割高な商品が放置されている実態が明らかになりました。
この問題に対してSNS上では、「自分の会社のラインナップを見直したら、手数料が高くて驚いた」「会社任せにしていると老後資金で損をしてしまう」といった、不安や危機感を募らせる加入者の声が相次いでネット上に投稿されています。
コスト1%と0.2%で生まれる「300万円の格差」とは
投資信託を保有する際にかかる管理費用を「信託報酬」と呼びます。投資家が支払い続ける実質的なコストであり、この料率が運用の最終成績を大きく左右するのです。2000年代前半には、日経平均などの指標に連動する「インデックス型」の投資信託でも、信託報酬が年1%を超える商品が目立っていました。
しかし、特に2015年以降は運用会社間の競争が激化し、現在では年0.2%未満という超低コストの商品が増加しています。例えば、毎月3万円を30年間積み立て、年5%の運用利回りと仮定して試算してみましょう。信託報酬が年1%の商品と年0.2%の商品では、最終的な運用成果に300万円以上の大差が生じてしまうのです。
なぜ企業は見直しに動かないのか?背景にある企業の怠慢
個人型確定拠出年金(iDeCo)であれば、自分で有利な金融機関を自由に比較して選択できます。そのため、個人型では高コストな商品はほとんど淘汰されています。一方で、企業型DCは会社が用意した選択肢から選ぶしかないため、企業側が商品を見直さなければ、社員は割高な商品を買い続けさせられることになります。
2018年5月1日には法改正が行われ、商品ラインナップの入れ替え手続きが大幅に簡素化されました。それにもかかわらず、確定拠出年金教育協会の調査では、約7割の企業が「当面は現状維持」または「見直しの予定なし」と回答しており、企業の腰の重さが浮き彫りとなっています。
金融機関の思惑と、開示を拒む「見ないでほしい」の本音
改革が進まない背景には、制度の運営を管理する金融機関(運営管理機関)の姿勢もあります。企業に高コストな商品を購入してもらう方が、金融機関にとっては手数料収入が増えて好都合だからです。過去には、大企業には低コスト商品を提示する一方で、交渉力の弱い中小企業には出し惜しみしているとの不満の声も上がっていました。
事態を重く見た厚生労働省は、2019年7月に各金融機関に対して商品一覧のウェブサイト開示を義務付けました。しかし、多くの金融機関はサイトの分かりにくい場所に掲載したり、コピー防止処理を施したりして、意図的に比較を難しく隠蔽するような対応に終始したのです。
社員の未来を守るために、労働組合や声を上げる仕組みが必要
2019年11月からは厚生労働省のポータルサイトで各社の開示ページがまとめられましたが、企業の動きは依然として鈍いままです。社内の担当部署が「過去の選定ミスを認めたくない」「業務が忙しくて手間をかけたくない」という内向きな理由で、加入者である社員の利益を軽視している姿勢は断じて許されるものではありません。
私は、企業は社員の老後の安心を預かっているという社会的責任を強く認識すべきだと考えます。もし会社の担当部門が動かないのであれば、労働組合などを通じて従業員側から積極的に商品の見直しを要求していくべきでしょう。自分の大切な資産を守るため、まずは自社のDC専用商品のコストをチェックすることから始めてみてください。
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