2020年という記念すべきオリンピックイヤーが、いよいよ幕を開けました。世界中の視線が日本へと注がれる中、航空自衛隊松島基地に所属するアクロバット飛行隊「ブルーインパルス」が、3月に開催される聖火到着式で華麗なパフォーマンスを披露することが決定し、大きな話題を呼んでいます。
ギリシャを出発した聖火は2020年3月20日に松島基地へと到着し、聖火皿への点火式が行われる予定です。その後、東日本大震災の被災地である宮城、岩手、福島の3県を巡り、2020年3月26日には福島県のJヴィレッジから聖火リレーがスタートします。「復興五輪」の象徴として大空を舞う彼らの姿に、胸を熱くする方も多いのではないでしょうか。
SNS上でも「聖火到着式での飛行が本当に楽しみ」「ブルーインパルスが東北の空を飛ぶ姿を想像しただけで涙が出そう」といった期待の声が続々と寄せられています。1964年の東京五輪や1998年の長野冬の五輪、さらには2019年のラグビーW杯でも人々を魅了してきただけに、今回の2020年東京五輪での動向にも熱い注目が集まるのは当然と言えます。
この華麗なパフォーマンスを支えるのは、選び抜かれた精鋭たちです。ブルーインパルスは6機の航空機と約10人のパイロットで構成されており、任期は3年となっています。航空自衛隊の戦闘機パイロットの中から志願し、厳しい基準を満たして「展示飛行操縦士」という資格を取得したプロフェッショナルだけが、あのコックピットに座ることができるのです。
大空の芸術を生み出す機体の秘密とパイロットの絆
彼らが操る機体は一見すると戦闘機と同じですが、武器は搭載していません。その代わり、低空飛行時に鳥と衝突する「バードストライク」というトラブルを防ぐため、翼に特殊な補強板が入っていたり、コックピットのアクリル板が厚く作られていたりします。このような細やかな安全対策があるからこそ、私たちは安心して美しい飛行を見届けることができるわけです。
展示飛行で披露される技は20種類以上に及びます。5機が全方向に散ってスモークで大輪を描く「サンライズ」や、夜空の花火のような「サクラ」など、息をのむ美しさです。ちなみにあの白いスモークは、スピンドルオイルという潤滑油をジェットエンジンの排気熱で気化させたもので、環境にも配慮された仕組みとなっています。
時速約1040キロメートルという、音速に近い「マッハ約0.9」の世界では、パイロットの体には凄まじい重力加速度(G)がのしかかります。脳から血が下がって失神してしまうのを防ぐため、彼らは下半身を強く締め付ける特殊な耐Gスーツを着用して訓練に励んでいます。まさに命がけの芸術と言っても過言ではないでしょう。
そんな過酷な世界に身を置く隊員たちですが、基地内では「TAC(タック)ネーム」と呼ばれる愛称で呼び合うアットホームな一面もあります。5番機を担当する河野守利3等空佐のタックネームは、佐賀県の方言に由来する「GABAI(ガバイ)」です。こうした強い絆と信頼関係があるからこそ、一瞬の狂いも許されない極限のフォーメーション飛行が実現できるのだと感じます。
東日本大震災の津波により、松島基地にいた機体が被災するという悲しい過去もありました。しかし、その垂直尾翼は今も震災の記憶を伝えるシンボルとして大切に保管されています。絶望から立ち上がり、再び大空を舞うブルーインパルスの姿は、東北の方々だけでなく、私たち日本国民全員に諦めない心と大きな希望を与えてくれるに違いありません。
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