中世ロマネスクの美を求めて!イタリアの秘境ポルトノーヴォで出会った「つらい道」を選ぶ取材旅の魅力

中世ヨーロッパの息吹を今に伝えるキリスト教の建築様式、それが「ロマネスク美術」です。11世紀から12世紀にかけて西欧で花開いたこのスタイルは、厚い石壁と素朴な彫刻が特徴となっています。美術史家の金沢百枝氏が、2020年1月11日に発表したエッセイでは、そんなロマネスクの聖堂を巡る情熱的な取材の裏側が瑞々しく描かれました。SNSでも「美しい景色への執念がすごい」「クリエイターの姿勢として胸に刺さる」と、大きな反響を呼んでいます。

取材班が訪れたのは、イタリア中部アンコーナの近郊に位置するポルトノーヴォです。目指す聖堂は、なんと美しい海岸沿いに佇んでいました。周囲には子どもの頭ほどもある、白く丸い石灰岩の石がゴロゴロと転がっています。実はこの聖堂も、その浜辺と同じ石灰岩で作られているのです。夕暮れ時を迎えると、周囲の崖も浜辺も、そして聖堂そのものも妖艶な薄紫色に染まり始めます。自然と建築が溶け合うその光景は、息をのむほどの美しさだったと言い表せるでしょう。

ロマネスク聖堂を取材する際は、丸一日をその場所で過ごすのが金沢氏の流儀です。建築空間や壁画、外観を彩る彫刻などは、朝、昼、夕方で太陽の光が変わり、見え方が劇的に変化するからに他なりません。基本的には太陽の動きに合わせ、東側から西側へと撮影を進めていきます。光の移り変わりを待つ間、周囲のロケーションをひたすら歩き回ることも欠かせないプロセスです。この日も数キロにわたって歩き続け、最高の瞬間をカメラに収めるための努力が続けられました。

そんな中、堂守の心優しいおじさんが「もっとよく見える場所がある」と、声をかけてくれたのです。彼が指さしたのは、海とは反対側にそびえ立つ、聖堂の後方に位置する絶壁の頂上付近でした。あまりの険しさに一瞬ひるんだ金沢氏は、長年旅を共にしてきた編集者兼カメラマンのS氏に「どうする?」と問いかけます。これまでイギリスやフランスなど、欧州各地を一緒に巡ってきた名コンビだからこそ、その答えは最初から決まっていたのかもしれません。

予想通りの急な坂道が続き、肩に食い込む機材の重みに耐えながら、取材班は必死に山を登ります。このとき金沢氏の脳裏には、以前S氏が語った「選べるなら、つらそうな方へ行く。楽な道は誰もが選ぶから」という言葉が蘇っていました。誰も見たことがない絶景を届けるメディア編集者として、この妥協のない姿勢には深く共感させられます。クリエイティブな仕事において、あえて困難な道へと突き進む探求心こそが、読者を魅了する傑作を生み出す原動力になるはずです。

ついに頂上へ到着したものの、木々が生い茂り、おじさんが首を傾げるハプニングに見舞われます。しかし、ここでも諦めないS氏は、なんとそのまま木に登り始めてしまいました。この飽くなき執念があるからこそ、私たちはまだ見ぬ世界の美しさに出会えるのでしょう。ヨーロッパ中に溢れるロマネスクの魅力を追い求める彼らの旅は、これからも挑戦に満ちた素晴らしいものになるに違いありません。今後の活動からも、目が離せそうにありませんね。

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