三重県四日市市に拠点を置き、非常に高い精度が求められる精密金属加工の分野で名高い株式会社中村製作所が、同市内に建設を進めていた最新工場の稼働を2020年1月28日までに開始しました。今回の設備投資により、金属を削る切削加工機や表面を滑らかに磨き上げる研磨機が新たに導入されています。これにより、会社全体の生産能力が従来よりも2割向上することとなりました。主力の工作機械向け需要が一時的に落ち込むなか、この先に見据える新市場への布石として大きな期待が寄せられています。
新工場の建築面積は約600平方メートルを誇り、内部には10台以上の最新鋭の加工機械が整然と並んでいます。総投資額は3億円にのぼり、主に工作機械向けの部品製造を担う予定です。現在の景気動向の影響で足元の稼働率はやや控えめなスタートとなったものの、これは将来的な市場の回復を確信した上での前向きな先行投資に他なりません。SNS上でも「この状況下で攻めの投資ができるのは強い」「日本のものづくり精神を感じる」といった、同社の決断を応援する声が多数上がっています。
中村製作所の強みは、既存の枠にとらわれない柔軟な事業展開にあります。今回の能力増強は、需要が伸びている自動車向け部品や、高い技術力が求められるロケットなどの宇宙航空分野における受注拡大を見据えたものです。工作機械とは、金属などの材料を削って別の機械の部品を作るため、いわば「マザーマシン(母なる機械)」と呼ばれる製造業の土台です。その基盤技術があるからこそ、異なる分野への応用もスムーズに進むのでしょう。多角化によってリスクを分散する経営手腕は、実に見事だと感じます。
さらに、この新工場には同社の大ヒット商品である「ベストポット」の生産体制を整えるという重要な役割も隠されています。ベストポットとは、四日市市の伝統工芸である「萬古焼(ばんこやき)」の窯元と共同開発した革新的な土鍋型無水調理器です。土鍋が持つ高い蓄熱性と、中村製作所が誇る航空宇宙部品レベルの極限まで隙間をなくす精密削り出し技術が融合しました。その圧倒的な保温機能から、炊飯器に代わる存在として、丁寧な暮らしを求める人々の間で大きな話題を呼んでいます。
従来の工場が手狭になったことで、満を持して立ち上げられた今回の新拠点。1969年11月の設立以来、職人たちの確かな技術を積み重ねてきた中村製作所は、従業員数58人、グループ年商約9億円という規模ながら、日本が世界に誇る中小企業の鑑のような存在です。伝統工芸と最先端の金属加工技術を掛け合わせることで、地方から世界へ向けて新しい価値を発信し続ける同社の姿勢には、これからの日本の製造業が生き残るためのヒントが詰まっているのではないでしょうか。
コメント