関西の大動脈が、ついに未知の領域へ踏み出しました。大阪市中心部を南北に縦断する大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)の御堂筋線において、2020年1月25日の未明、終電時刻を午前2時台まで約2時間も繰り下げる画期的な実証実験が実施されたのです。この試みに対してSNS上では「神対応すぎる」「これで終電を気にせずミナミで朝までハシゴできる!」といった歓喜の声が続出しており、トレンドワード入りを果たすほどの盛り上がりを見せています。
通常であれば、すでにシャッターが下りて静まり返っているはずの午前1時30分。御堂筋線のなんば駅ホームには、大きなスーツケースを引いた外国人観光客や、仕事を終えてお酒を楽しんだ様子の会社員らが熱気混じりに電車の到着を待っていました。車内に目を向けると、座席には比較的余裕があるものの、乗客たちの表情は一様に満足げです。オーストラリアから訪れたという男性は、浮いたタクシー代でもう一杯お酒を楽しめそうだと、笑顔で声を弾ませていました。
インバウンド消費の起爆剤!夜間経済「ナイトタイムエコノミー」への期待
今回のダイナミックな実験を主導したのは、国の機関である国土交通省です。その背景には、日本を訪れる外国人旅行者、いわゆる「インバウンド」による消費額の伸び悩みという深刻な問題が存在します。訪日客の数自体は右肩上がりで増えているものの、1人あたりの旅行支出は足踏み状態が続いています。政府は2020年に年間8兆円という高い消費目標を掲げていますが、2019年の速報値は約4兆8000億円にとどまり、目標達成へのハードルは極めて高いのが現状でしょう。
そこで起爆剤として白羽の矢が立ったのが、夜間の観光や飲食文化を活性化させる「ナイトタイムエコノミー(夜間経済)」の拡大です。観光庁のデータによれば、イギリスのロンドンでは約3兆7000億円、アメリカのニューヨークでは約2兆1000億円もの巨大な夜間市場が形成されています。日本はこの分野において世界に大きく遅れをとっており、深夜の移動手段を確保することは、観光客が夜間にお金を消費しやすい環境を整えるための最優先事項と言えます。
大阪観光局もこの動きに連動しており、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)や、統合型リゾート(IR)の誘致を見据え、24時間体制で観光客をもてなせる都市づくりを推進しています。すでに2018年には夜のスポットを紹介するウェブサイトを開設し、深夜のWi-Fi利用率が大幅に上昇するなど確かな手応えを掴んでいるようです。ネット上でも「日本の夜は店が閉まるのが早すぎるから、この取り組みは外国人ウケが良いはず」と、好意的な意見が多く散見されます。
安全性と人手不足の壁!持続可能な深夜鉄道インフラへの課題
しかし、都市の24時間化へ向けた歩みには、決して無視できない高い壁が立ちはだかっています。最も懸念されるのは、命に関わる安全運行の担保でしょう。鉄道会社は通常、終電から始発までのわずか3時間から4時間ほどの短い夜間帯に、レールの摩耗チェックや落下物の撤去といった線路の保守点検を行っています。今回の実験ではこの作業を取りやめて運行したため、専門家からは安全面に対する一抹の不安やリスクを指摘する声も上がっています。
さらに、深刻な労働力不足と「働き方改革」の波が追い打ちをかけます。皮肉なことに、JR西日本などの近畿圏の主要路線では、深夜帯の乗客減少やメンテナンス作業員の確保難を理由に、むしろ終電時刻の繰り上げを検討しているのが実態です。全線での終電延長は現実的ではなく、今後は利用データに基づいて需要の高い路線を厳選する視点が不可欠となるでしょう。また、深夜の泥酔者によるトラブルや、駅構内および周辺の治安対策も急務となります。
編集部としては、今回の実験は大阪が国際都市として飛躍するための大いなる一歩であると確信しています。経済の活性化とインフラの安全マネジメントは、どちらか一方を犠牲にして良いものではありません。作業員の労働環境を守りつつ、最新の自動点検技術を導入するなど、日本独自の「安全で快適な眠らない街」を構築していく智慧が求められているのではないでしょうか。これからの大阪メトロの本格的な舵取りに、日本中が注目しています。
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