医薬品卸という業界で、今、営業社員の存在感を高めるための新たな一手として注目を集めている取り組みがあります。2020年2月3日現在、医療用医薬品卸大手であるアルフレッサが推進しているのは、社員に「医療経営士」という資格の取得を推奨することです。この動きが、単なるスキルアップにとどまらず、地域医療との強固な信頼関係を築く鍵となっているのです。
そもそも、医薬品卸の営業担当者は「MS(マーケティング・スペシャリスト)」と呼ばれ、特定の製薬会社製品に特化したMR(医薬情報担当者)とは役割が異なります。MSは、より多角的な視点から幅広い医薬品の情報提供を行うとともに、価格交渉といったビジネスの最前線を担う存在です。アルフレッサでは、2016年度からこのMSたちに、専門資格である医療経営士の学びを奨励しています。
医療経営士とは、医療機関の経営に必要な知識を幅広く修得した人材を認定する資格です。なぜ今、この資格なのでしょうか。その理由は、現代の医療現場が求める「説明能力の向上」と「地域社会への貢献」にあります。SNS上でも「ただ薬を売る時代は終わった」「経営コンサルに近い視点がないと生き残れない」といった医療現場からの切実な声が散見され、まさにこの流れを象徴しているといえるでしょう。
地域包括ケアの時代に不可欠なパートナーへ
少子高齢化が進む中、地域全体で高齢者を支える「地域包括ケアシステム」の構築が急務となっています。これは、病院やクリニックだけでなく、介護施設やケアマネジャーといった、これまで以上に幅広いステークホルダーが連携する必要がある仕組みです。顧客の相談相手となるためには、従来の薬の知識だけでは力不足だといわざるを得ません。
資格取得のメリットは、現場での対応スピードに直結しています。以前は、診療報酬や薬価といった複雑な制度変更の説明会を開催する際、本社から専門部署の担当者が派遣されるのが一般的でした。しかし、医療経営士の知識を持つMSなら、1人でも的確な助言が可能になったのです。これにより、地域のニーズに対して極めて迅速かつ柔軟なサポート体制が整うようになりました。
個人的には、この取り組みを非常に高く評価しています。というのも、MSが医療機関の経営課題という深い領域に踏み込むことで、病院側との関係性が「御用聞き」から「真の経営パートナー」へと進化しているからです。実際に、医師からの開業相談や新規商材の提案など、新たな可能性が次々と掘り起こされている事実は、ビジネスとしての大きな成長性を感じさせます。
学び続ける姿勢が競合との差別化を生む
もちろん、資格の取得は平坦な道のりではありません。テキストは10冊にも及び、難易度も年々高まっています。会社側は受験費用や教材費を補助するなどのバックアップ体制を整えていますが、最終的には社員一人ひとりの自発的な意欲が不可欠です。現在、アルフレッサのMS約2000名のうち、すでに約1500名がこの難関を突破しているといいます。
この数字から分かる通り、社員の意識変革は着実に進んでいます。資格を取ることはゴールではなく、あくまで出発点に過ぎません。社内では、現場のMSが自発的に最新の医療制度を学ぶ勉強会を開催する動きも活発化しているといいます。こうした「学びの文化」こそが、国内の医薬品市場が成熟していく中で、競合他社に差をつける最大の武器になるのではないでしょうか。
「顧客に寄り添い、共に発展するウィンウィンの関係を築く」。この目標を達成するために、プロフェッショナルな人材を育成し続けることは、これからの医薬品卸にとって避けては通れない道です。医療制度の波を正しく理解し、地域のネットワークを紡ぐ架け橋として、彼らが今後どのような価値を生み出していくのか、私は強く期待しています。
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