世界株高の裏に潜む「下値への備え」とは?2020年の政策限界を見据えた賢い銘柄選びの極意

世界中の株式市場が米中貿易摩擦の緩和への期待感から、最高値圏という華やかな景色に包まれています。しかし、この上昇相場の裏側で、経験豊富な投資家たちは密かに「次なる嵐」への備えを始めています。2019年11月20日現在、一見すると強気一色の市場に見えますが、実は下落局面でのダメージを最小限に抑えようとする動きが急速に強まっているのです。

こうした投資家の心理を映し出すように、SNSやネット掲示板でも「今の上げは少し怖い」「高値掴みをしたくない」といった慎重な声が目立ち始めました。特に注目を集めているのが、価格の振り幅が小さい「低ボラティリティ銘柄」です。これは、株価が大きく上下に動く激しさを指す「ボラティリティ」が低い、つまり値動きが穏やかで安定した企業の株を指します。

アライアンス・バーンスタインのサミー・鈴木氏が手掛ける運用戦略では、相場が上がるときの上昇率は全体の9割に留まりますが、逆に下がるときのマイナスを7割に抑えるという徹底した守りの姿勢を貫いています。この戦略に基づくファンドには、公的年金や保険会社といった、大切なお金を預かる機関投資家から多額の資金が流れ込んでおり、その運用額は1兆円という驚くべき規模に達しているのです。

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守りの要となる銘柄と「最小分散型」の台頭

具体的にどのような銘柄が「下落に強い」として選ばれているのでしょうか。2019年9月30日時点の保有リストを見ると、世界的な製薬大手のロシュや、日本国内では安定した収益を誇る日本オラクル、さらに不動産投資信託である日本ビルファンド投資法人などが上位に名を連ねています。これらは業績の変動が少なく、不透明な経済状況下でも着実な成長が期待できる企業群と言えるでしょう。

また、特定の指数に連動するETF(上場投資信託)の世界でも、リスクを最小限に抑える「最小分散型」に人気が集中しています。2019年10月末と比較しても、JR九州やキヤノンといった組み入れ上位の銘柄は堅調な動きを見せました。2019年11月19日の市場でも、日経平均株価が崩れる中でこれらの銘柄は小幅な下げに留まっており、その防御力の高さが証明された形です。

さらに投資家の警戒心は、オプション市場にも明確な数字として現れています。将来の決められた価格で「売る権利」であるプットオプションの取引量が、買う権利を大きく上回る「プット・コール・レシオ」が、2019年11月7日には約13年ぶりの高水準を記録しました。これは多くの投資家が、保険をかけるように下落に備えた売買を行っている証拠であり、決して楽観視できない空気が漂っています。

2020年に向けた政策余地の枯渇と編集部の視点

なぜ、これほどまでに警戒が必要なのでしょうか。ピクテ・アセット・マネジメントのルカ・パオリーニ氏は、2020年の世界経済が2019年の予想成長率2.8%から2.7%へと減速すると予測しています。さらに深刻なのは、世界の中央銀行がすでに利下げなどの金融緩和をやり尽くし、各国政府も財政出動を終えているため、万が一のショック時に打ち出す「次の一手」という政策余地が乏しい点にあります。

私個人の見解としては、現在の市場は「薄氷の上のダンス」を踊っているような状態だと感じます。債券から株式へと資金が流れる「グレート・ローテーション」の恩恵で、年末にかけて株価が一段高になる可能性は十分にあります。しかし、誰もが「まだ上がる」と確信したときこそ、市場のバランスが崩れる絶好の売り場へと変貌するリスクを忘れてはなりません。

好景気のニュースに踊らされることなく、今のうちにポートフォリオの一部を防御力の高い銘柄へシフトしておくことは、賢明な選択と言えるでしょう。相場が好調な今だからこそ、市場が発している静かな警告に耳を傾け、2020年という未知の1年を乗り切るための準備を整えるべき時期が来ているのではないでしょうか。

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