日本の住宅建築を支える重要な資材である北米産丸太の価格に、今、大きな変化が訪れています。2019年07月18日、7月積みの日本向け輸出価格交渉が決着し、主要な品種が3カ月連続で値下がりすることが判明いたしました。家づくりの要ともいえる「梁(はり)」などの構造材に使われる米松ですが、今回の価格下落はこれまでの市場環境が転換期を迎えたことを象徴しているのかもしれません。
今回の値下げの背景には、強力なライバルである欧州産建材の台頭が挙げられます。特に日本と欧州連合(EU)の間で締結された「経済連携協定(EPA)」の発効が、市場の力関係を大きく変えました。EPAとは、特定の国や地域間で関税を撤廃・削減し、自由な貿易を促進するルールのことです。この関税引き下げに加え、為替相場の円高傾向が追い風となり、欧州産の集成材が非常に手に入りやすい価格で国内に流入しているのです。
SNS上では、家づくりを検討中の方々から「建築コストが下がるのでは?」と期待する声が上がる一方で、木材関係者からは「北米産のブランド力が試されている」といった緊張感漂う意見も見受けられます。激化するシェア争いの中で、北米の林業大手は日本側からの値下げ要求を受け入れざるを得ない状況に追い込まれました。市場の指標となる米松の「IS級」は、1000スクリブナー当たり830ドルと、前月比で20ドルの下落を記録しています。
専門的な単位である「スクリブナー」とは、丸太からどれだけの製材が取れるかを推定する北米独自の容積単位で、1000スクリブナーはおよそ5.4立方メートルに相当します。今回、直径30センチ以上の大径木が値を下げた一方で、屋根を支える部材に用いられる小径木(SLC級)は据え置きとなりました。米国側としては、これ以上の価格下落を食い止めたいという防衛本能と、品質への自負が入り混じった複雑な判断を下したと言えるでしょう。
国内の商社売値を見てみますと、2019年07月時点では1農林石あたり8000円から8300円程度で推移しており、前月よりも確実に値下がりしています。ここで言う「農林石」とは日本独自の材積単位で、約0.28立方メートルを示します。私個人の見解としては、自由貿易の恩恵で建材が安くなることは消費者にとって喜ばしい反面、過度な価格競争が産地の供給体制を不安定にさせないか、注視していく必要があると考えています。
欧州産集成材には依然として先安観が漂っており、今後も北米産丸太との熾烈なシェア争いは続くことが予想されるでしょう。日本の住宅の質を保ちつつ、コストパフォーマンスをどう追求していくのか、建築業界全体が難しい舵取りを迫られています。高品質な米松が身近になるこの機会は、家を建てる側にとっても絶好のタイミングになるかもしれません。今後の価格動向からも、ますます目が離せなくなりそうですね。
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