美術史家であり、多摩美術大学名誉教授としても多大な功績を残された本江邦夫(もとえ・くにお)氏が、2019年6月3日に心筋梗塞のため70歳で急逝されました。この突然の訃報は、美術界はもちろん、多くの関係者に深い衝撃を与えています。本江氏は、その卓越した知識と情熱をもって、日本の美術研究と教育を長きにわたり牽引してこられた、まさに美術界の巨星と呼ぶべき存在でしょう。
本江氏の経歴は、その尽きることのない美術への探究心を示しています。かつては東京国立近代美術館にご勤務され、日本の近代美術の発展に寄与されました。その後、府中市美術館の館長として、地域に根ざした美術館運営とユニークな企画展を通じて、美術をより身近なものにする活動にも力を注がれました。美術史家というアカデミックな立場だけでなく、美術館という現場を深く理解されていたことが、その業績の幅広さを物語っています。
訃報を受けて、SNS上では美術関係者や教え子、そして展覧会の来場者など、多くの方々から追悼のコメントが寄せられています。「ご冥福をお祈りいたします」という言葉とともに、「在りし日の先生との思い出」や「企画された展覧会の感動」を語る声が目立ちました。特に、その美術に対する温かいまなざしや専門的な解説の分かりやすさを評価する声が多く、本江氏がいかに多くの人々に愛され、尊敬を集めていたかが伺えます。
また、本江氏は教育者としても非常に熱心でした。多摩美術大学で長年にわたり教鞭を執り、2019年からは同大学の美術館長に就任されるなど、まさに美術の殿堂ともいえる場所で、若き才能の育成に情熱を注いでいらっしゃいました。その専門分野である美術史においては、特に象徴主義の画家として知られるオディロン・ルドンに関する著作『オディロン・ルドン 光を孕(はら)む種子』など、学術的に価値の高い著書を多数出版されています。
オディロン・ルドン(1840年-1916年)は、現実には存在しない幻想的なモチーフを、夢のような色彩で表現したフランスの画家です。本江氏が彼の研究に深く取り組まれたことは、単なる歴史の解説に留まらず、美術というものの内面性や精神性を重視されていたことの証左ではないでしょうか。彼の美術史研究は、作品の背景にある作家の思想や哲学に光を当て、鑑賞者により深い洞察を与えてくれるものでした。
本江氏が美術界に残された功績は計り知れません。美術史家としての学術的な貢献、美術館館長としての実務的な貢献、そして教育者としての次世代への貢献と、その全てが日本の美術文化の発展に不可欠なものでした。残された私たちにとって、その偉大な足跡を辿り、本江氏が示された美術への真摯な姿勢を受け継いでいくことが、何よりの供養となるはずです。
告別式は2019年6月10日午前10時より、東京都多摩市聖ケ丘1の30の2にあるカトリック多摩教会にて執り行われる予定です。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
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