測定機器のリーディングカンパニーである堀場製作所が、電気自動車(EV)や自動運転といった次世代モビリティ分野において、大きな攻勢をかけています。同社の堀場厚会長兼グループ最高経営責任者(CEO)は、今後の成長戦略として、国内外の主力工場や子会社に相次いで試験施設を新設する方針を打ち出しています。これは、これまで同社が強みとしてきた「測定」というニッチな領域から一歩踏み出し、自動車業界の変革期における必須のパートナーとなることを目指す、戦略的な一手と言えるでしょう。
特に注目すべきは、英国の子会社であるホリバ・マイラ社が新設する**「ブラックレイク」という試験コースです。これは、自動運転技術に対応した車の動きを詳細に把握するために不可欠な施設で、自動車メーカーが車両を持ち込んでテストを実施する場となります。また、高い技術力を持つマイラ社がエンジニアリング面でのサポートも提供する体制を整えているのです。このマイラ社の持つ先進技術を英国に留めることなく、日本、中国、米国といった主要な市場へと展開していくことが、同社の重要な課題となります。
堀場会長は、自動車関連分野への投資を毎年50億~60億円の規模で継続していく考えを示しており、自動車分野を半導体や環境といった他のセグメントをも包括する、最も重要な事業領域と位置づけています。この重要性は、2018年から自動車担当の取締役を設置したことからも伺い知ることができます。主力事業であった排ガス測定機器についても、内燃機関を持つ車が今後も8割程度は残るという見通しから、確固たるビジネスとして存続すると見ています。
しかし、自動車メーカーの研究開発費がEVや自動運転などの次世代車へシフトしていくのは当然の流れです。この「技術の潮目」において、いかにメーカーと一緒になって新しい課題に対応できるかが、堀場製作所の将来を左右するといっても過言ではありません。同社はこれまでも技術の転換期を商機として捉え、投資を継続することでシェアを拡大してきた実績があります。堀場会長は、この変化を「ホリバリアン」(堀場製作所の従業員の呼称)にとっての新たな商機と捉え、果敢に挑戦していく姿勢を強調しています。
この戦略の一環として、国内では2019年中にびわこ工場内に、EV関連の試験評価施設「セルゼロ」を新設する予定です。また、中国でも将来的に現地自動車メーカーが利用できる施設の建設を計画しており、グローバルでの体制強化を進めています。同社が目指すのは、測定機器の提供だけでなく、サービスを含めた「トータルソリューション」**の会社です。エンジンの排ガス測定からバッテリー、燃料電池などの試験・評価まで一貫して担える体制を構築することで、「完成車メーカーやティア1から唯一無二、なくてはならない会社だといわれるようになる」ことを目標としています。
日本の自動車産業の構造変革と堀場製作所の挑戦
自動車開発の構造について見ると、ドイツではボッシュやコンチネンタルといった巨大サプライヤーが完成車メーカーを支援する体制が確立されているのに対し、日本では各メーカーが自前で技術開発を完結させる「自前主義」が強く残っていました。しかし、EV化や自動運転といった新しい技術領域の広がりは、自動車業界全体の構造そのものを大きく揺るがしています。堀場会長は、今後は同社が受託して開発を支援するビジネスがこれまで以上に増加すると見込んでいます。
これは、新技術開発に必要な莫大なコストや専門性を、すべての自動車メーカーが単独で賄うことが難しくなるからです。そのため、特定の技術領域に特化した堀場製作所のような企業が、メーカーの垣根を越えて開発を支援する役割を担うことになります。このビジネスモデルの変革を推し進める姿勢を、堀場会長はプロ野球選手になぞらえて表現しています。大リーグのエンゼルスで活躍する大谷翔平選手に対して相手チームが守備陣容を変える**「大谷シフト」のように、堀場製作所も自動車を最重要分野と位置づけ、投資を集中する「大谷シフト」を敷くつもりだと語っているのです。
インターネット上では、この堀場製作所の積極的な投資と戦略に対して、「ニッチな領域での強みを活かした賢明な判断」「測定技術はどんな技術革新にも必要とされる」といった好意的な意見が見受けられます。特に、EVや燃料電池といった新しい分野での試験評価を「トータルソリューション」として提供できる点に、大きな期待が集まっているようです。私見ですが、この「大谷シフト」は、日本のものづくり企業が時代の変化に対応し、グローバル市場で存在感を高めるための理想的な戦略モデルになり得ると感じています。
堀場製作所は、長年にわたり培ってきた測定技術という揺るぎない基盤を持ちながら、時代の最先端を行くモビリティ分野へ果敢に挑戦しています。2019年6月6日時点でのこの戦略的な取り組みは、同社を単なる測定機器メーカーから、次世代自動車開発のイノベーションを支える戦略的パートナー**へと変貌させる可能性を秘めていると言えるでしょう。今後の投資の成果と、世界各地での「マイラ技術」のローカライズの進展に、大いに注目が集まります。
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