2019年6月2日付けの記事で注目を集めているのが、テクノロジーの巨人が「モノの流れ」、すなわち物流の世界を根底から変えようとしている動向です。米ウーバーテクノロジーズが展開する「ウーバーフレイト」は、まさにこの“移動革命”の担い手として大きな存在感を放っています。このサービスは、荷物を送りたい荷主(にぬし:貨物の輸送を依頼する企業や個人)と、トラック運転手をスマートフォンアプリ上で直接結びつけるマッチングプラットフォームです。
特に、2017年に米南部を襲った大型ハリケーン「ハービー」の際の対応は、その真価を世界に示しました。多くの物流ブローカーが週末で休業する中、ウーバーフレイトはわずか1台平均34分という驚異的な速さで100台を超えるトラックを手配し、480万本もの飲料水を被災地に届けたのです。この迅速性は、料金前払いなど運転手にとって魅力的な仕組みと、全米で40万人を超える運転手を抱えるネットワークによって実現されており、この効率性がSNSでも「災害時の対応力がすごい」「これぞITの力」と大きな反響を呼んでいます。
デジタルの力で非効率な輸送市場を最適化
米国では、商業物流の約7割をトラック輸送が占めているものの、その受発注のやりとりは、いまだに電話やファクスといった旧態依然とした手法に大きく依存しているのが実態だといいます。この非効率な慣習を打破しようというのが、ウーバーの狙いでしょう。ウーバーフレイトを担当するエリック・ベルディニス氏が語るように、業種や地域によって細分化されている輸送市場において、「アプリ一つで全米を網羅できる」利便性へのニーズは計り知れません。
ウーバーは、配車サービス「ライドシェア(相乗り)」を普及させた経験を活かし、「ボタンを押せば、車が来る」という手軽さを貨物トラックの世界にも持ち込みました。サービス開始からわずか2年弱で、すでに1,000社を超える顧客を獲得しており、この勢いはまさに、巨大な市場にデジタルの光を当てた結果と言えるでしょう。米国の物流関連の年間支出は1兆4,000億ドル(約150兆円)にも上り、国内総生産(GDP)の7.5%を占めるこの巨大なフロンティアに、IT大手が進出するのは当然の流れだと考えられます。
アマゾンの「自前主義」が加速!空と地上の物流を支配する
そして、この物流革命のもう一つの主役が、世界最大のEコマース企業であるアマゾン・ドット・コムです。同社は、従来の物流大手である米UPSなどへの依存度を大幅に引き下げるため、「自前主義」による物流網の構築を急速に進めています。その決意を象徴する出来事として、2019年5月14日、ケンタッキー州の空港で行われた新たな航空貨物ハブ(拠点)の起工式が挙げられます。
ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)自らが建機に乗り込み、「地球を動かそう」と参加者を鼓舞したこのイベントは、アマゾンが物流を単なるコストではなく、競争力の源泉と捉えていることを示しています。将来的に現在の2倍となる約100機の貨物専用機を運用すると見込まれており、さらに1年前には宅配分野の起業支援プログラムも開始しています。都市間の長距離輸送から、個人宅への「ラストワンマイル」と呼ばれる最終配送区間に至るまで、自前の物流網でコントロールすることで、会員向けの翌日配送サービスを全米に広げることを目指しているのです。
競争と協調が生む新しいプラットフォーム戦略
さらに、IT大手の動きはアマゾンだけにとどまりません。米グーグルも、自前の車両などを活用し、一部都市で最短即日配送が可能なサービスを開始しました。興味深いのは、この動きがアマゾンの競合である米ターゲットなどの小売大手を引きつけている点です。「敵の敵は味方」とばかりに、グーグルが提供する配送網に小売り大手が参加することで、アマゾン一強に対抗する構図が生まれています。
これらの動きから見えてくるのは、「消費者接点」を握るプラットフォーマーたちが、デジタルな情報だけでなく、現実の「モノの流れ」までも最適化し、支配しようとしている新しい潮流です。これまでの物流はインフラ産業としての側面が強かったですが、これからはデータとテクノロジーを駆使するデジタル・ロジスティクス(デジタル技術を用いた物流の最適化)が、この巨大市場の勝敗を分けることになるでしょう。消費者の利便性が飛躍的に向上する一方で、既存の物流業者は、この新しい「移動革命」の波にどう立ち向かうのか、その戦略が今、問われています。
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