2018年の二輪車世界市場は、前年を大きく上回る勢いで成長を遂げ、総販売台数は5736万台に達しました。なかでも圧倒的な存在感を放っているのが、首位を独走するホンダです。同社は年間販売台数で初めて2000万台という驚異的な大台を突破し、世界王者としての地位をさらに盤石なものにしました。SNS上でも「2000万台という数字はもはや想像がつかない」「世界の道を走るバイクの3台に1台がホンダという計算になるのか」と、その規模の大きさに驚嘆する声が相次いでいます。
この世界的な活況を支えているのは、間違いなくインド市場の爆発的な成長でしょう。2018年、インドの二輪需要は前年比で12.8%も増加し、2157万台という途方もない記録を打ち立てました。世界全体の需要の約4割がこの一国に集中しており、まさに地球上のバイク熱の震源地となっているのです。インドの街中を埋め尽くすバイクの波は、同国の経済発展を象徴する光景となっており、メーカー各社にとってインドでの勝敗が世界シェアを左右する決定的な要因となっています。
インド勢の猛追とホンダの次なる戦略
現在、インド国内でトップを走るのは、世界シェア2位にもランクインしているヒーロー・モトコープです。彼らはインド国内で約4割の占有率を誇り、まさに「国民の足」としての地位を確立しました。特筆すべきは、同社の「スプレンダー」という小型バイクと、ホンダのスクーター「アクティバ」による熾烈な首位攻防戦です。SNSでは「実用性のヒーローか、洗練のホンダか」といったユーザー同士の熱い議論も見られ、両社のライバル関係が市場を熱く盛り上げている様子が伺えます。
ホンダはこの巨大市場での覇権を奪還するべく、2020年までにインドでの生産能力を年間700万台まで引き上げるという野心的な計画を打ち出しました。これは単なる増産ではなく、現地の嗜好に合わせた徹底的なローカライズ戦略の一環といえます。近年では、ギア操作の必要がない「スクーター」への需要が急速に高まっており、ホンダはこのトレンドをいち早く掴むことで、ベトナムやインドネシアといった東南アジア諸国でも「ビジョン」などの主力車種をヒットさせているのです。
一方で、3位のヤマハ発動機も負けてはいません。フィリピン市場では、AT(オートマチック・トランスミッション)付きスクーターが爆発的に売れており、販売台数は驚きの3割増を記録しました。AT車とは、クラッチ操作を必要とせず、アクセルを回すだけで加速できるバイクのことで、手軽に乗れる点が都市部の若者や女性層に支持されています。ヤマハもこれに応える形で現地の生産工場を拡充し、供給体制を現在の2倍に相当する年間80万台へと強化する方針を固め、シェア拡大を狙っています。
成熟する市場と変化するバイク文化の未来
これまでの二輪市場は「安価な移動手段」としての側面が強調されてきましたが、今後はその様相が大きく変化していくと私は予測します。中国市場のように、所得向上に伴ってバイクから自動車へとシフトする「モータリゼーション」が進む一方で、新興国では「より速く、より高価なモデル」への憧れが強まっています。単なる生活の道具から、趣味や自己表現の手段へと、バイクに求められる価値が高度化しているのです。これは日本のメーカーが得意とする、高品質で付加価値の高いモデルが輝くチャンスでもあります。
バジャジ・オートやTVSモーターといったインド勢も、2桁成長という驚異的なスピードで日本メーカーの背後を追いかけてきています。彼らは低コストな生産背景を武器に、排気量の大きい中型モデルへの進出も狙っており、もはや「安かろう悪かろう」というイメージは過去のものです。これからの世界シェア争いは、単なる販売台数の競い合いではなく、次世代のライダーたちにいかにして「所有する喜び」を提供できるかという、ブランド力と技術力の真剣勝負になるのではないでしょうか。
2019年08月06日時点のデータが示す通り、二輪車産業はかつてない激動の時代を迎えています。インドや東南アジアの熱狂的な市場を誰が制するのか、そしてホンダの牙城を崩す勢力が現れるのか、一瞬たりとも目が離せません。かつて日本が世界を席巻したときのように、今のインド勢の躍進には凄まじいエネルギーを感じます。私たち編集部も、このエネルギッシュな市場の変化を、引き続き最前線からお届けしていきたいと考えています。
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