【金価格急伸】「1350ドルの壁」突破へ!米利下げ観測と貿易摩擦リスクで輝く「安全資産」の魅力

2019年6月8日現在、金価格が鮮烈な急伸を見せています。今年4月以降、膠着状態にあった相場は、米国を起点とする貿易摩擦リスクの劇的な高まりを受けて株価が急落すると、一気に火がつき、約3カ月半ぶりの高値水準に到達しました。この貿易摩擦が世界の実体経済に暗い影を落とし、いよいよ米国が利下げに踏み切るのではないかという観測が市場全体に広がり始めています。これまで長期にわたって金価格の頭を押さえてきた米国の金利上昇サイクルが終焉を迎えるとの見方が強まれば、「1トロイオンス1350ドル」という長年の天井を突き破り、さらなる高みを目指す展開が期待されます。

国際的な指標とされるニューヨーク先物市場では、金価格は現在1トロイオンス1330ドル台で推移しており、5月末の安値から比較すると、わずかな期間で約5%も価格が上昇しました。この急騰の直接的なきっかけとなったのは、トランプ米大統領によるメキシコ製品への関税引き上げ表明です。ただでさえ米中間の貿易交渉が難航しているさなか、この強硬姿勢が改めて投資家に認識され、世界的な株価急落を招きました。株価と反比例するように、安全資産である金への資金流入が加速し、価格は1300ドル台へと上昇したのです。投資家がリスクを回避する動きの中で、同じく安全資産とされる米国債も買われ、特に10年債の利回りは約1年9カ月ぶりの低水準まで低下しました。この一連の流れが、究極の受け皿として金市場にも買いを呼び込みました。

その後の米株式市場は急反発しましたが、金相場は反落するどころか、6月5日の時間外取引で一時1348ドル台と、2月の年初来高値に肉薄しました。株価が続伸する中でも、金価格は6日の終値まで7営業日連続で上昇を記録するという異例の強さを見せています。この金の勢いを一段と後押ししているのが、米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和、すなわち利下げに動くとの観測です。FRBのパウエル議長が4日の講演で、「貿易摩擦による経済への影響を注視し、景気拡大を維持するために適切に行動する」と発言したことが、利下げ観測を一気に増幅させました。ここでいう「適切に行動する」とは、景気悪化を防ぐための**金融政策の変更(利下げ)**を示唆するものと、市場は強く受け止めました。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が算出する、政策金利の先行きの確率を示す「フェドウオッチ」によると、市場ではなんと98%という高い確率でFRBが年内に利下げを実施すると見込んでいる状況です。米国の利下げは、金にとっては最大の追い風となります。なぜなら、金は金利を生み出さない資産であるため、一般的に、預貯金や債券などの金利が下がると、金を持つことのデメリットが相対的に軽減されるからです。この利下げ観測への敏感な反応は、単に金利との比較だけにとどまりません。それは、2015年の米利上げ局面開始以降、金が何度も跳ね返されてきた1350ドル前後という「長期的な天井」を、ついに打ち破るのではないかという期待感と強く結びついているためでしょう。

過去には、2016年6月の英国のEU離脱決定や、2017年9月の北朝鮮ミサイル発射による米朝間の地政学リスクの高まりなど、金にとっての強材料が重なった時期がありました。これらの時期はFRBが一時的に利上げを休止するなどの好条件も重なりましたが、結局1350ドルの壁を抜けることはできませんでした。今年2月に米利下げ観測で年初来高値をつけた際も、壁に見事に跳ね返されています。これは、当時は米中間の対立緩和への期待感が根強く、株式市場から金への資金流入が限定的だったことが原因です。しかし、今回は様相が異なり、マーケットアナリストの豊島逸夫氏が指摘するように、「米金融政策の転換が本当に確認されれば、長期の上値を脱する」という見方が、強気の根拠を裏付けています。

そして、金を買い集めているのは、一般の投資家だけではありません。2018年以降、市場で最大の買い手となっているのは各国の中央銀行です。特に、米国との関係が悪化している中国とロシアによる購入が際立っています。ロシアは年初からすでに64トンを購入し、中国の金保有量も年初から36トン積み増され、初めて1900トンを超えました。両国合計で100トンもの購入量は、韓国の金準備全体に相当する規模であり、金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏も「新興国中銀による大量購入が相場を下支えする」と分析しています。これほどの買い手が存在する状況は、金の底堅い需要を示すものとして、非常に心強いと言えるでしょう。

この金相場が今後どう動くのか、市場の注目は6月中に予定されている二つの重大なイベントに集まっています。一つは、6月18日から19日にかけて開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)です。この会議でFRBが利下げの可能性について具体的な言及をするかどうかが焦点となります。そしてもう一つは、20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて開催が模索されている米中首脳会談です。もしFOMCで「米利下げ」の方向性が確認され、さらに米中首脳会談が「破談」という最悪の結果に終わるような事態になれば、投資家のリスク回避姿勢が決定的なものとなり、金価格は間違いなく一段と高騰する可能性が高いでしょう。今後の国際情勢から目が離せません。

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