2019年08月09日、現代の働き方を大きく変える可能性を秘めた「副業・兼業」の規制緩和を巡り、大きな議論が巻き起こっています。政府は個人の多様なキャリア形成を支援するため、労働時間の管理ルールを柔軟にする方針を打ち出しました。しかし、働く人々の健康を守る立場からは根強い反対意見が噴出しており、厚生労働省も慎重な舵取りを迫られている状況です。秋から議論が本格化する予定ですが、スムーズな決着への道筋は未だ不透明といえるでしょう。
現在の労働基準法には、労働者を過度な労働から守るための「労働時間通算」というルールが存在します。これは複数の職場で働く場合でも、すべての勤務時間を合計して管理しなければならないという決まりです。1948年の通達以来、長らく維持されてきたこの仕組みですが、複数の雇用主が互いの労働時間を把握し合う手間が、企業が副業を認める際の大きな壁となってきました。政府はこのハードルを下げ、より自由に働ける環境を整えようと計画しています。
厚生労働省の検討会が2019年08月08日に公表した報告書では、画期的な案が示されました。それは、残業時間の上限規制を職場ごとに適用し、他社での労働時間を合算しないという仕組みです。また、割増賃金(残業代)の支払い義務についても、自社での勤務が法定時間を超えた場合のみに限定する案が含まれています。これにより企業の事務負担は軽減されますが、あくまで「選択肢の例示」に留まっており、法制化へのハードルは決して低くありません。
労働者の健康確保と企業の責任を巡る対立
この動きに対し、労働界からは厳しい批判の声が上がっています。日本労働組合総連合会(連合)の相原事務局長は、事業主ごとに規制を適用すれば、労働者の健康を守るという法の本来の目的が失われてしまうと強く警告しました。実際に複数の職場で働けば、合計の労働時間が長時間化しやすくなるのは明白です。もし体調を崩した場合、本業と副業のどちらの会社が責任を負うべきかという判断も非常に難しくなるため、慎重な議論が求められています。
かつて「脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)」が導入される際も、過労死を助長するとして激しい論争が巻き起こり、実現までに3年もの歳月を要しました。専門的な立場からは、今回の副業規制緩和も同様の長期戦になると予想する声が少なくありません。SNS上でも「収入が増えるのは嬉しいが、会社に管理されないと際限なく働いてしまいそうで怖い」といった、期待と不安が入り混じった複雑な反応が数多く見受けられます。
総務省の調査によれば、2017年時点で副業を希望する人は424万人に達し、20年前と比較して約100万人も増加しました。しかし、実際に副業を認めている企業は全体の15%程度に過ぎません。個人のスキルアップや収入増といったメリットを最大限に活かすためには、健康を守る「安全網」と、挑戦を阻まない「柔軟性」をいかに両立させるかが鍵となります。私たち編集部としても、働く人が主役になれるバランスの良い着地点を見出すべきだと考えます。
コメント