2019年6月9日、流通業界において、インフルエンサーを活用したマーケティングが新たな潮流となっています。特にアメリカの小売業者を対象とした調査では、実に31%の企業がすでにSNSなどを利用したインフルエンサーマーケティングを経験しているという結果が出ています。一度も取り組んだことがなく、今後もその予定がないと回答した企業はわずか33%に留まっており、この手法がすでに現地では一般的な戦略として浸透していることがうかがえます。日本国内でも数年前から注目されてはいるものの、まだ本格的な導入に踏み切れていない企業が多いのが現状ではないでしょうか。
こうした状況の中で、大手流通グループのイオンは、SNSを巧みに使い分け、情報発信を効果的に行っています。同社のLINE公式アカウントのユーザー数は369万人に達するほか、フェイスブックで46万人、インスタグラムで3.9万人、ツイッターで62万人という、非常に多くのフォロワー数を獲得しているのです。それぞれのSNSの特性、つまり「情報伝達」「口コミの拡散」「ブランドイメージの構築」といった役割を最大限に生かすことで、相乗効果を狙った戦略を展開していると言えるでしょう。また、単にSNS内だけに留まらず、テレビCMや新聞折り込みチラシといった既存のメディアとも連携させ、目的に応じてクリエーティブ(広告の表現方法)のバリエーションを変えるという、多角的なアプローチをとっている点も見逃せません。
デジタルネイティブ世代へのアプローチには不可欠な存在
インターネットとSNSの普及により、消費者の購買行動は大きく変化し、インフルエンサーの存在感は増すばかりです。特に、幼い頃からインターネット環境の中で育ったミレニアル世代(一般的に1980年代から2000年代初頭生まれ)や、さらにデジタルに慣れ親しんだZ世代(一般的に1990年代中盤から2010年代初頭生まれ)といった、デジタルネイティブへのアプローチにおいて、インフルエンサーの活用は避けて通れない最重要課題になっています。インフルエンサーにも、フォロワー数が100万人を超えるような「有名人枠」から、5万人以下のマイクロインフルエンサー、そして1万人以下のナノインフルエンサーなど、様々な規模の階層が存在しています。彼らは、消費者の信頼を醸成したり、実際の購入を促したり、単なる認知度を高めたりと、それぞれのフォロワー規模に応じた特有の役割を担っているのです。
実際に国内外で大きな反響を生んだ成功事例も報告されています。例えば、化粧品や健康食品を手掛けるファンケルがシンガポールで有名ブロガーに自社製品の感想をフェイスブックに投稿してもらったところ、なんと7700万件もの「いいね!」を獲得したという驚異的な結果を叩き出しました。また、国内では歌手の小林幸子さんが110人のインフルエンサーを集めて行ったインスタグラムでのライブ配信が、160万人を超えるフォロワーに届けられたそうです。スタジアムで160万人を動員することは物理的に不可能ですが、インフルエンサーを介することで、これだけ多くのファンと一体感を共有できたという事実は、その影響力の大きさを雄弁に物語っています。
成果を出すための鍵は「緻密な戦略設計」にあり
インフルエンサーの活用は、単なるプロモーションの道具としてだけでなく、彼らの発信や消費者とのやり取りの中に、商品開発のヒントが隠されているという側面も見逃せません。小売業にとっての大きな課題は、「あの商品・サービスがあるから、あのお店に行きたい」という目的来店をするお客様をどれだけ増やせるかという点にあります。この課題に対して、インフルエンサーマーケティングは非常に有効な一手となるでしょう。私見ではありますが、消費者が日々接する情報の源が多様化している今、信頼できるインフルエンサーが発信するリアルな声は、従来の広告よりもはるかに来店動機を高める力を持っていると感じています。
しかし、残念ながら、ただ情報を流すだけで成功するというほど、この分野は甘くはありません。最大の効果を得るためには、どのターゲット層に、どの商品やサービスを、どのメディアの特性に合わせて、どれくらいの数値目標をもってアプローチするかという、緻密な設計が不可欠です。すでに店舗が飽和状態にある現代の小売業界で生き残り、成長を続けるためには、競合店に先駆けて自店への来店の優先度を消費者の心の中で高めていかなくてはなりません。インフルエンサーマーケティングは、まさにこの目的に対して、大きな成果を生み出す有効打となり得るのです。
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