「インスタグラムで自社商品を拡散してほしい」と願う企業の担当者は多いはずですが、せっかくフォトスポットを設営しても投稿数が伸び悩むケースが目立っています。実は今、SNSを日常的に使いこなす若い女性たちの間では、写真に対する美意識が劇的な変化を遂げているのです。派手な装飾や豪華な背景を用意すれば良いという時代は終わり、現在は「いかに自分が可愛く写るか」という視点が何よりも重視されています。
2019年08月09日現在、SHIBUYA109で開催され大きな注目を集めているのが、フォトジェニックアート展「VINYL MUSEUM(ビニール・ミュージアム)」です。2017年の開始から累計来場者数が4万人を突破したこのイベントは、一見すると非常にシンプルな展示に見えるかもしれません。しかし、スマホの画面越しに覗くと、人物が最も魅力的に引き立つよう計算し尽くされた空間が広がっており、その工夫が爆発的な人気を支えています。
主役は背景ではなく「私」!ストーリーズ時代の投稿心理
SNS上では「ストーリーズ」という、24時間で投稿が消える機能が定着したことで、日常の何気ない風景はそちらへ流れるようになりました。その結果、プロフィール画面に残る通常のフィード投稿には、本当に「とっておきたい」と思える特別な体験しか選ばれなくなっています。ここで言う「特別な体験」とは、単に場所が珍しいことではなく、その空間にいる自分が最高に輝いている状態を指すと言っても過言ではありません。
SNSの反響を見ても、「背景がゴチャゴチャしていると自分の顔が埋もれてしまう」といった声が多く、人物を際立たせるための引き算のデザインが支持されています。例えば、三重県の三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島で実施された「ジャズカサ」キャンペーンは、色鮮やかな傘が空を彩る演出で、通常の3倍以上の「いいね」を獲得しました。これは風景としての美しさはもちろん、傘の光が天然のフィルターとなって人物を美しく見せた結果です。
専門用語で言う「フォトジェニック」とは、直訳すれば「写真映えする」という意味ですが、現代の定義では「自分を主役にしてくれる魔法の空間」と言い換えられるでしょう。編集者の視点から見ても、これからのプロモーションには「自分語り」を邪魔しない余白のデザインが不可欠だと感じます。企業側が「これを見ろ」と押し付けるのではなく、ユーザーが「ここにいる私を見て」と言える舞台を用意することこそが、2019年のマーケティングにおける正解なのです。
結局のところ、投稿の熱量を決める決定打は、画面上で「自分が納得できる可愛さ」を実現できているかどうかに集約されます。どれほど高価なセットを組んだとしても、撮影者の肌がきれいに見えなかったり、顔に影が落ちたりするような場所では、指先は「シェア」のボタンへは動きません。徹底的にユーザーの自撮り心理に寄り添い、鏡のような役割を果たすスポットを提供すること。それこそが、SNS時代の共感を生む最短ルートと言えるでしょう。
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