2019年09月20日のニューヨーク株式市場では、これまで快進撃を続けてきた動画配信の王者、ネットフリックスの株価が一時7%を超える大幅な下落を見せ、投資家の間に動揺が広がっています。米中貿易摩擦への懸念からダウ工業株30種平均が続落する中で、同社の下げ幅はひときわ目立つものとなりました。かつて急成長株の代名詞だった面影は影を潜め、市場には冷ややかな空気が漂い始めています。
この株価急落の背景には、2019年04月から06月期の決算で明らかになった契約者数の伸び悩みがあります。2019年07月17日の決算発表時と比較すると、09月20日時点の株価は約25%も下落しており、同期間のダウ平均がわずか1%安にとどまっていることからも、ネットフリックス固有の苦境が鮮明に浮かび上がります。SNS上でも「ついに成長の限界か」といった悲観的な声が目立ち始めています。
さらに投資家を不安にさせたのが、リード・ヘイスティングスCEOによる弱気な発言です。彼は2019年09月20日、イギリスでの会合にて「11月から全く新しい世界が始まる」と語り、競合他社との厳しい戦いを認めました。ここで言う「新しい世界」とは、Appleやウォルト・ディズニーといった巨大資本が独自の動画配信サービスを開始することを指しており、王者の座が脅かされることへの危機感が露呈した形です。
契約者数の推移を見ても、かつての勢いは失われつつあります。2018年には前年同月比で40%から50%台の伸びを記録していた米国外のアプリダウンロード数ですが、2019年09月には5%増まで減速しているというデータも報告されました。米国内ではすでに契約者数が減少に転じており、市場を独占していたフェーズから、限られたパイを奪い合う過酷な「体力勝負」のフェーズへと移行したといえるでしょう。
高騰するコンテンツ獲得費用と「ロク」を襲った激震
苦境に立たされているのは契約数だけではありません。人気作品の配信権を維持するための費用が異常なほど高騰しています。ネットフリックスは2019年09月16日、伝説的コメディ番組「サインフェルド」の配信権獲得を発表しましたが、その取得額は5億ドル(約540億円)以上にのぼると報じられました。これは以前に他社が支払っていた額の約5倍に相当し、良質なコンテンツを確保するためのコストが経営を圧迫しています。
こうした状況について、私は「ユーザーの可処分時間の奪い合い」が極限に達した結果だと考えています。1日は24時間しかなく、視聴者が動画に割ける時間は限られています。これまでは「ネットフリックスかそれ以外か」という構図でしたが、今後は有力な選択肢が乱立することで、莫大な制作費を投じてもリターンが得られないリスクが高まります。コンテンツの質が上がるのは消費者として嬉しい反面、ビジネスモデルの持続性には疑問が残ります。
また、この波乱は配信プラットフォーム以外にも波及しています。動画配信機器の最大手である「ロク」の株価も、2019年09月20日までの3日間で30%近く急落しました。これは通信大手のコムキャストが自社機器の無料化を打ち出したことが引き金となっています。いわゆる「プラットフォームの無料化」が進むことで、これまで専用機器を販売して利益を得てきた企業の存立基盤が揺るがされる事態となっているのです。
各証券会社の予想も、目標株価が230ドルから450ドルまで大きく乖離するなど、プロの目から見ても先行きは極めて不透明です。2019年11月の巨大ライバル参戦を目前に控え、動画配信業界はまさに嵐の前の静けさを迎えています。この「動画配信戦争」で最後に笑うのは、盤石な資金力を誇るディズニーか、それとも先駆者のプライドを見せるネットフリックスなのか。世界中の投資家がその行方を注視しています。
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