JT株価が7年ぶり安値に?加熱式たばこ「プルーム」の苦戦とESG投資がもたらす地殻変動の真相

「煙のない社会」を目指すという衝撃的な宣言から2年余り。米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)が展開する加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」は、日本国内で一時品薄になるほどの社会現象を巻き起こしました。これに対し、国内の雄である日本たばこ産業(JT)は2018年夏にようやく「プルーム」を全国発売しましたが、そのシェアは約1割に留まるという厳しい現実に直面しています。

加熱式たばこ(HTP)とは、たばこ葉を燃やさずに加熱し、発生した霧状のニコチン(エアロゾル)を吸い込む製品を指します。火を使わないため煙や灰が出ず、有害成分の低減が期待されることから、健康意識の高まりとともに急速に普及しました。しかし、JTはこの「ゲーム・チェンジ」において、競合他社に一歩出遅れた印象を拭い去ることができていないのが現状です。

スポンサーリンク

シェア奪還への険しい道と下方修正の衝撃

JTは2019年8月、従来モデルの課題であった「吸い応えの物足りなさ」を改善した新型プルームを投入し、反撃の狼煙を上げました。しかし、市場ではすでに紙巻きたばこから加熱式への移行が一段落しており、かつてのような爆発的な勢いは見られません。証券アナリストからは、強力な営業網を持ちながらも、市場構造の変化に迅速に対応しきれなかったことへの厳しい指摘が相次いでいます。

経営への影響も深刻で、JTは2019年12月期の加熱式販売計画を50億本から40億本へと下方修正しました。加熱式たばこは1本当たりの利益が紙巻きの約2倍に相当する13円程度と高収益なだけに、この減速は業績の重荷となります。さらに、国内の紙巻き販売数量も前期比で8%減少する見通しであり、稼ぎ頭である既存事業の縮小も投資家の不安を煽る要因となっています。

2020年4月には改正健康増進法が全面施行され、飲食店などでの喫煙ルールが劇的に変わります。加熱式たばこ専用スペースでは飲食が可能になるため、これを機に切り替える層の獲得が期待されますが、先行してブランドを確立したアイコスの牙城を崩すのは容易ではありません。SNS上でも「アイコスから乗り換える理由が見当たらない」といった声が散見され、ユーザーの囲い込みが急務と言えるでしょう。

「嫌煙」投資家の台頭とESGが描く未来

JTの苦境は製品戦略だけではありません。昨今の株式市場では、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を重視する「ESG投資」が主流となっています。健康被害を引き起こすたばこ産業は、投資対象から除外される「ダイベストメント(投資撤退)」の標的になりやすく、機関投資家による「嫌煙」ムードが株価の押し下げ圧力となっているのです。

株価は2016年の高値4850円から右肩下がりを続け、2019年9月4日には約7年ぶりの安値となる2179円を記録しました。配当利回りが6%を超えるという驚異的な還元姿勢を見せ、自社株買いも実施していますが、それでも積極的な買いが入らない現状は異常事態と言えます。投資家は目先の配当よりも、紙巻き撤退を明言しないJTの消極的な姿勢に将来性の不安を感じているのかもしれません。

私個人の見解としては、JTは今こそ「たばこ会社」という定義を再定義する時期に来ていると感じます。新興国での買収による規模拡大は、減損リスク(資産価値の減少を帳簿に反映させる損失処理)を抱える諸刃の剣です。単なる延命策ではなく、社会から必要とされる「嗜好品の本質」を見出し、PMI以上のスピード感で変革を提示できなければ、投資家の心を取り戻すのは難しいでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました