私たちの暮らす街には、バスの時刻表から図書館の開館スケジュール、さらには郵便ポストの回収時間に至るまで、膨大なデータが溢れています。しかし、2019年10月01日現在、これらの貴重な情報の多くが宝の持ち腐れとなっているのが実情でしょう。こうした未活用の情報を市民の手で掘り起こし、世界へ発信しようとする新しい「まちづくり」の動きが、今まさに全国各地で大きな盛り上がりを見せているのです。
SNS上では「自分の街の隠れた魅力を再発見できた」「地図作りが意外と楽しい」といったポジティブな反響が相次いでいます。なかでも注目したいのが、参加者が街を歩きながら地図を更新していく「マッピングパーティー」というイベントです。これは誰でも編集可能な「オープンストリートマップ」を活用し、特定のテーマに沿って情報を書き込んでいく活動を指します。市民が主体となってデータを紡ぐ姿は、現代の新しいコミュニティの形と言えるでしょう。
例えば「アクセシビリティ」をテーマにした場合、車椅子を利用する方やベビーカーを押す親御さんにとって重要な、道の段差や身障者用トイレの位置などを調査します。アクセシビリティとは、高齢者や障害者を含むあらゆる人が、施設やサービスをいかに支障なく利用できるかという「利用しやすさ」を意味する専門用語です。こうした細やかな視点は、行政の既存データだけではカバーしきれない、市民の歩取からこそ生まれる貴重な財産となります。
デジタル百科事典で地域の記憶を継承する「ウィキペディアタウン」の可能性
次にご紹介したいのが、2013年に横浜市で産声を上げた「ウィキペディアタウン」という取り組みです。これは、市民が実際に街を歩いて専門家の話を聞いたり、図書館で文献を調査したりして、地域の文化遺産や名所をインターネット百科事典「ウィキペディア」に書き込む活動を指します。2019年10月01日時点では日本各地に活動が波及しており、その詳細な実績や今後の予定は、オンライン上で誰でも確認することが可能です。
さらに、より自由度の高い発信を可能にする「ローカルウィキ」という草の根の活動も注目を集めています。事実情報の記載に徹するウィキペディアに対し、ローカルウィキは主観的な感想やおすすめの風景など、個人の想いを込めた投稿が許容されている点が大きな特徴です。子育て支援の情報や地元の歴史など、多様な観点から地域の解像度を高めていくプロセスは、まさに世界へ向けたデジタルな「郷土資料」作りといっても過言ではありません。
私は、こうした活動こそが「官民連携」の真髄であると考えています。自治体職員と市民、そして有識者が同じ目線でデータを共有することで、街の課題が可視化され、より深い議論が生まれるからです。デジタルスキルの高い経験者が未経験者をサポートする仕組みもあり、多世代交流の場としても機能しています。単なる情報収集に留まらず、自分たちの手で街を表現し、より良く変えていく喜びが、これからの日本の活路を切り拓くでしょう。
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