総合化学大手である東ソーの2019年4月から9月期における連結決算にて、営業利益が前年同期と比べて約3割も減少する400億円程度に留まる見通しとなりました。この急激な利益の剥落は、世界経済を揺るがしている米中貿易摩擦の影響が色濃く反映された結果と言えるでしょう。中国市場の冷え込みが予想以上に深刻化しており、同社の屋台骨を支える事業に暗い影を落としています。
特に大きな打撃を受けたのが、売上高全体の4割近くを占める「クロル・アルカリ事業」です。この部門では、住宅や家電の断熱材として欠かせない「ウレタン原料」や、衣類に使われる合成繊維の材料、さらには紙や石英ガラスの製造に用いる「カセイソーダ」などを取り扱っています。SNS上でも「景気のバロメーターである化学品がこれほど下がるとは」と、先行きを不安視する声が目立っている状況です。
ウレタン原料「MDI」の価格急落と市場の需給バランス
今回の業績悪化の主因となったのは、ウレタン原料の一つである「MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)」の価格暴落です。この物質は、冷蔵庫の断熱材や接着剤として幅広く活用されていますが、2019年7月から9月期の平均価格は1トンあたり約1800ドルまで下落しました。前年同期が3000ドルを上回る高値で推移していたことを踏まえると、わずか1年で約4割もの価値が失われた計算になります。
前年の高騰は、競合であるドイツのBASFや中国メーカーの工場トラブルにより、市場の供給が極端に絞られたことで起きた一時的な「バブル」に近い状態でした。現在はそれらの設備が復旧し、供給が正常化したことで反動減が起きています。加えて中国の景気減速により、家電や消費財向けの需要が著しく低下したことが、価格の下押し圧力に拍車をかけているようです。
カセイソーダの苦戦と今後の展望
利益を圧迫している要因はMDIだけではありません。化学繊維や紙の製造工程で不可欠なアルカリ性薬剤である「カセイソーダ」も、海外市場を中心に販売価格が低迷しています。日本国内向けについては、2018年に実施した値上げをなんとか維持できているものの、海外勢との価格競争や需要の停滞を補うには至りませんでした。東ソーの連結売上高も、製品単価の下落によって4100億円程度へと微減する見込みです。
編集者としての私見ですが、今回の東ソーの苦境は一企業の経営問題というよりも、世界的な製造業のサイクルが停滞期に入った象徴的な出来事だと感じます。特に半導体製造装置に用いられる石英ガラスの出荷減は、ハイテク産業全体の足踏みを裏付けています。原材料価格の変動という外部要因に左右されやすいビジネスモデルだからこそ、今後は付加価値の高いスペシャリティ分野へのさらなるシフトが急務となるでしょう。
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