新潟県阿賀野市に拠点を置き、日本の冬の風物詩を陰で支える臼井農畜産が、大きな勝負に出ました。同社は2019年10月29日、ベトナムのダナン近郊に新たな生産拠点を設ける方針を明らかにしています。この計画によって、2020年までには主力製品である「わら縄」の年間生産能力が、現状より約3割も多い45万本へと大幅に引き上げられる見通しです。伝統的な技術と海外の活力を融合させるこの決断は、地域経済にも新しい風を吹き込むことでしょう。
今回の海外進出の背景には、製造コストの最適化という戦略的な狙いが透けて見えます。中国などの周辺諸国と比較しても人件費を低く抑えられるベトナムは、高品質な製品を安定して供給するための理想的な場所と判断されました。SNS上でも「伝統工芸に近い製品が海外で作られるのは驚きだが、存続のためには賢明な選択だ」といった、企業の先見性を評価する声が上がっています。コスト競争力を高めることで、熟練の技が詰まった製品がより手に取りやすくなるのは喜ばしい限りです。
雪国を救う「雪つり」の必需品が世界へ羽ばたく
ここで注目したいのが、わら縄の主な用途である「雪つり」です。これは、積雪の重みで庭木や街路樹の枝が折れてしまわないよう、縄で枝を保持する日本独自の伝統技法を指します。東北や北陸といった降雪地域では欠かせない知恵であり、冬の景観に情緒を添える役割も果たしています。臼井農畜産が手掛ける丈夫なわら縄は、こうした厳しい自然環境から樹木を守るための「生命線」とも言える重要な資材なのです。
さらに興味深いことに、この日本伝統の資材に対する熱視線は国内に留まりません。昨今の欧米諸国では日本庭園が空前のブームとなっており、本物志向の愛好家たちの間でわら縄の需要が急速に高まっています。同社は今後、インターネット通販サイトなどを積極的に活用し、国境を越えた直接販売にも力を入れていく構えです。日本の「おもてなし」の心が詰まった庭園文化が、新潟発の縄を通じて世界中の庭を彩る日はそう遠くないはずです。
一編集者の視点から見れば、地域の伝統産業が安価な海外拠点を持つことは、文化の「保存」と「拡散」を両立させる素晴らしいモデルケースだと感じます。労働力の確保が難しい国内の課題を解決しつつ、海外の販路を切り拓く姿勢は、まさに攻めの経営と言えるでしょう。ベトナムの新工場が本格稼働すれば、日本が誇る四季の美しさを守る技術は、より強固なものへと進化を遂げるに違いありません。
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