2019年、日本中がラグビーの熱狂に包まれる中、かつての名将たちが語った勝利への哲学が改めて注目を集めています。スポーツの枠を超え、現代のビジネスシーンにも通ずるその教えは、組織の在り方を根本から問い直すものばかりです。かつて日本代表を率いた故・平尾誠二氏は、選手の「自主性」こそが勝敗を分けると説きました。
1999年に平尾氏へ取材した際、彼は「試合中の瞬時の判断は選手個人に委ねられるべきだ」と強調していたのが印象的です。監督の指示を待つだけの組織では、激動するフィールドの変化に対応できないという危機感があったのでしょう。SNS上でも「平尾氏の先見の明は今も色褪せない」と、彼の自由闊達なスタイルを懐かしむ声が多く上がっています。
パワーの差を埋める「組織の力」と松尾雄治氏の視点
一方で、日本ラグビー界のレジェンドである松尾雄治氏は、また異なる視点から組織の強化を論じています。経済界の会合で平尾氏の自主性重視について話題を向けると、松尾氏は慎重な姿勢を見せました。個の判断に頼るだけでは、体格やパワーで勝る海外選手との決定的な差を埋めるのは容易ではない、という現実的な懸念を示したのです。
ここで鍵となるのが、ラグビーの代名詞とも言える「スクラム」です。これはFW(フォワード)と呼ばれる8人の選手が肩を組み、相手と押し合うセットプレーを指します。個人の筋力(パワー)が重要視されますが、それ以上に全員の力を一点に集中させる「結束の技術」が求められます。松尾氏は、個の力に頼りすぎず、組織としての連動性を極めることの重要性を説いたのでした。
個人の自律性を重んじる平尾流と、組織の緻密な連携を説く松尾流。一見すると対立するように見えますが、これらは決して矛盾するものではありません。むしろ、現代の企業組織が直面している課題そのものだと言えるでしょう。個々が高い判断力を持ちつつ、集団として一つの方向へ力を結集できるチームこそが、最後には勝利を掴み取るのです。
私は、この二人の哲学が融合した時、真のブレイクスルーが生まれると確信しています。指示待ち人間ばかりでは活気が失われますが、バラバラに動いては大きな壁は突破できません。ラグビーが教えてくれるのは、個の輝きを組織の力へと昇華させる「絆」の尊さです。2019年10月24日、私たちはこの教訓を胸に、自らの組織を見つめ直す時期に来ています。
コメント