私たちの食生活に欠かせない「パーム油」の国際価格が、いま激しく揺れ動いています。2019年11月09日現在、主要な指標となるマレーシア市場の先物価格は1トンあたり2500リンギ前後まで跳ね上がり、約1年ぶりの高値を記録しました。
わずか1ヶ月強の間に15%もの急騰を見せた背景には、世界最大の消費国である中国による「異例の輸入拡大」が深く関わっています。SNS上でも「身近な食品が値上がりするのでは」と、将来的なコスト負担を懸念する声が広がり始めているようです。
中国の「豚熱」が世界の食用油バランスを変えた
なぜ中国は、これほどまでにパーム油を求めているのでしょうか。その発端は、中国全土で猛威を振るっている「アフリカ豚コレラ(豚熱)」にあります。これは豚にとって致死率が極めて高い伝染病であり、飼育頭数の劇的な減少を招きました。
家畜が減れば、そのエサとなる大豆の需要も当然ながら落ち込みます。中国は大豆を搾って家畜の飼料(大豆粕)と食用油(大豆油)を同時に生産していますが、飼料が不要になったことで大豆の輸入そのものを抑制する事態となりました。
しかし、人間の食事に使う油の需要が減ったわけではありません。不足した大豆油の穴を埋めるため、中国は地理的にも近く、使い勝手の良いパーム油へと一気にシフトしたのです。2019年9月までの1年間で、その輸入量は前年比2割増という驚異的な数字を叩き出しました。
投機マネーの流入と私たちの暮らしへの影響
市場の過熱に拍車をかけているのが、投資家たちによる投機的な動きです。他の穀物市場に目立った好材料がない中、消去法的にパーム油へ資金が流れ込んでおり、1日の取引高が通常の2倍以上に膨れ上がる日も珍しくありません。
実需だけでなく、こうした「マネーゲーム」の側面が価格を押し上げている現状には、一抹の危うさを感じざるを得ません。在庫水準自体は決して低くないにもかかわらず、期待感だけで価格が独り歩きしている印象を受けるからです。
パーム油は、即席めんやマーガリン、お菓子などの加工食品に幅広く使われる「見えない油」です。現在は1キロ159円前後で推移している国内価格ですが、国際相場が高止まりを続ければ、遠くないうちにメーカー各社から値上げの発表があるでしょう。
私たちは、遠く離れた中国の家畜事情が、巡り巡って日本の食卓のコストに直結しているというグローバル経済の現実を、今まさに目の当たりにしています。賢い消費者として、今後の価格動向には細心の注意を払っておく必要がありそうです。
コメント