2019年11月6日、日本の重工業界を揺るがす大きなニュースが飛び込んできました。川崎重工業が、長年親しまれてきた農業機械や園芸用機器向けの「汎用エンジン」における国内販売事業を、三菱重工グループへ譲渡することを決定したのです。汎用エンジンとは、特定の車両や機械に限定されず、草刈機から発電機まで幅広い用途に活用されるエンジンの総称を指します。今回の決定は、同社がグローバル市場で勝ち抜くための布石と言えるでしょう。
具体的なスケジュールによれば、2020年2月1日付で川崎重工業の完全子会社であるカワサキモータースジャパンから、三菱重工メイキエンジンへと事業が引き継がれます。三菱重工メイキエンジンは名古屋市に拠点を置き、小型エンジンの製造に定評がある企業です。今回の契約によって、同社は川崎重工業ブランドの製品を独占的に販売する権利を獲得しました。長年のライバル関係とも言える両社の間での事業譲渡は、業界再編の波を感じさせます。
SNS上では、この発表に対して「カワサキのエンジンが載った草刈機がなくなるのは寂しい」「信頼のブランドだけに三菱重工への移管は安心感がある」といった驚きと納得の声が入り混じっています。ユーザーにとって気になるのは今後のブランド名ですが、当面の間は「カワサキ」の名称で販売が継続される見通しです。しかし、2022年1月を境に三菱重工系のブランドへと完全に切り替わり、生産拠点も順次移管される計画となっています。
今回の経営判断の背景には、驚くべき収益構造の違いが隠されています。川崎重工業の汎用エンジン事業は、2018年度に500億円を超える売上高を記録していますが、その約8割を北米市場が占めているのです。対する国内市場の売上比率はわずか5%未満に留まっており、経営資源を成長著しい海外マーケットへ集中させるのは合理的な選択と言えます。限られたリソースをどこに投下するかという「選択と集中」の徹底ぶりが伺えるでしょう。
編集者の視点から申し上げれば、この決断はまさに「攻めの撤退」だと評価しています。国内市場を守ることに固執せず、強みを発揮できる北米での製品開発に全力を注ぐ姿勢は、成熟した日本企業が進むべき一つの指針ではないでしょうか。なお、既存のユーザーが最も懸念するアフターサービスや部品供給については、今回の譲渡対象から除外されています。これまで通り安心して川崎重工業のサポートを受けられる体制が維持される点は、大きな安心材料です。
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