【和牛の未来】最高級「A5ランク」急増が示す消費との“ズレ”!赤身志向と高騰の波をどう乗り越えるか

和牛の格付けにおいて、最高ランクであるA5評価の割合が急激に増加し、2018年度にはそれまで最大だったA4を初めて上回ったことが大きな話題となっています。この現象は、和牛の品種改良が進み、脂のサシ、つまり霜降りの入り方が向上したことと、肥育農家が高い価格で取引されるA5を目指して牛を育てるようになったことが背景にあるといえるでしょう。しかし、一般の消費者にとって和牛はすでに高級品であり、A5の増加はかえって消費者離れを加速させてしまうのではないかという懸念も出ています。

そもそも、肉牛の格付けはどのように決まるのでしょうか。国内の肉牛は、和牛と乳牛などを含む国産牛がおよそ半々を占めています。和牛の格付けは、歩留まり等級と肉質等級の二つの基準で判断されます。歩留まり等級は、一頭の牛から取れる肉の量を表し、多い順にA、B、Cで評価されます。一方、肉質等級は、サシの入り方や肉の締まり、色つやなどを総合的に評価し、最高の「5」から最低の「1」までの5段階で表されるのです。この組み合わせにより、C1からA5まで全部で15段階で評価される仕組みです。

2018年度の去勢和牛の格付け結果を見ると、A5が全体の41%を占め、A4の38%を抜き去り、過去最多となりました。これはわずか10年前のA5の割合が18%前後であったことを考えると、2倍以上に増えたことになります。現在、A5とA4を合わせると、全体の約8割を占める状況です。この数年来の肉ブームに乗って、特にA5ランクは「最高級部位」として広く知られるようになり、訪日外国人(インバウンド)による高級外食店向けの新たな需要も生まれるなど、その人気は根強く定着しています。

最高評価のA5は、やはり競りにおいても高値で取引されています。例えば、東京食肉市場における去勢和牛の卸値(年間平均)を見ると、2018年はA5が1キロあたり2842円で、A4の2499円やA3の2242円を大きく上回っているのです。家畜改良センターの入江正和理事長は、「生産者は、高値で取引されるA5の出荷を増やすことを目標として牛を育てています」と語っています。これは、生産者側にとって、より高い収益を目指す当然の流れでしょう。

供給側の切実な事情も背景にあります。和牛の約9割を占める黒毛和種の子牛の仕入れ値は高騰を続けており、平均価格は5年前に比べて1.5倍となり、最高値圏で推移しているのです。この厳しい採算を改善するためには、より高く売れるA5を目指すほかないのが実情で、「低い格付けでは出荷しても赤字になってしまう」という切実な声も聞かれます。生産者の努力と、利益追求という経済原理の結果が、このA5の急増という形で表れているといえるでしょう。

一方、このA5の増加傾向に対して、業界内では警戒感も広がり始めています。ある仲卸業者は、「ここまでA5が増えてしまうと、最高級品としての希少性が失われてしまう」と懸念を示しているのです。また、近年は健康志向の高まりから、脂が少ない赤身肉を求める消費者が増えており、「需要がそれほど強くない霜降り肉を、高い価格で買わなければならない」という嘆きの声も漏れてきています。SNSでも、「A5は脂が多すぎて胃もたれする」「もっとヘルシーな赤身の和牛が食べたい」といった意見が散見され、消費者も選択肢の少なさに不満を感じているようです。

和牛の価格自体も依然として高止まりが続いており、デフレ志向が根強い一般消費者の需要との間に、大きなズレが生じ始めていることも見逃せません。2018年の去勢和牛(A5)の卸値は、2010年の1キロ2139円と比べると、実に3割以上も値上がりしています。スーパーの仕入れ担当者は、「A4やA5よりも、価格の安いA3や通常の国産牛を求める消費者が多い」と語り、飲食店の経営者も「最近は国産牛の仕入れを増やしている」と話すなど、すでに現場では消費者ニーズの変化に対応する動きが見られるのです。

私の意見としては、生産者が高い技術でA5品質を達成していることは素晴らしいことですが、このままA5への偏重が進むと、多様な消費者のニーズに応えられなくなり、和牛市場全体が縮小してしまうリスクがあると考えます。最高級品としての価値を保つためにも、希少性を高める努力と、赤身肉を求める健康志向の消費トレンドに対応した新たな価値の創出が急務ではないでしょうか。

品種改良の現場でも、これまで重視されてきたサシの量を増やすことから、「今は脂の質を高める品種改良に軸足を移した」と入江理事長は語っています。これは非常に重要な転換点です。ただし、「牛の品種改良には10年単位の長い時間がかかるため、しばらくはA5の割合が増え続ける可能性が高い」とのことです。和牛産業が持続的に発展するためには、生産現場と消費者の間で、より良いバランスを見つけるための対話と戦略的な取り組みが必要となるでしょう。和牛の格付けと消費者の需要のギャップを埋めるための、今後の動向から目が離せません。

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