2019年の原油相場は、一筋縄ではいかない展開を見せています。2019年4月下旬には、欧州の「ブレント原油先物」という国際的な価格指標が一時1バレル75ドルを超えるまで上昇しました。しかし、2018年10月に記録した86ドル台の高値には届かず、2019年5月下旬にかけては大きく値を下げる場面もありました。SNSでは「原油が下がればガソリン代が助かる」「いや、世界経済が不安だ」と、一喜一憂する声が聞かれます。
まず、価格の上値を重くしている要因がいくつか存在します。一つは、国際エネルギー機関(IEA)の2019年5月の統計で示された、世界的な石油需要の伸び悩みです。米中貿易摩擦などの影響で世界経済が減速し、特に中国を中心としたアジアの需要が下方修正されました。さらに、米国での原油生産が拡大を続けており、供給面でのだぶつきも意識されています。
しかし、価格がこのまま下落し続けるとも言い切れない、深刻な火種もくすぶっています。米国政府が、2019年5月から対イラン原油制裁の猶予措置を再延長せず、本格的な禁輸に踏み切ったことです。これによりイランの輸出は激減しました。加えて、経済危機が続くベネズエラの生産量も落ち込んでおり、この2カ国だけで日量100万バレル近い供給が市場から消えようとしています。
問題は、この供給減を誰が埋めるかです。サウジアラビアなどOPEC(石油輸出国機構)には増産余力がありますが、昨秋に一度制裁緩和で「はしごを外された」経緯から、米国の要請にすぐ応じるかは不透明です。何より、世界の石油輸送の大動脈である「ホルムズ海峡」の緊張が極度に高まっており、万が一、タンカーの航行に支障が出れば、相場は一気に高騰する究極のリスクをはらんでいます。
この原油相場の行方は、日本経済にも直結します。市場が「リスクオン」(投資家が強気になる状態)の際は、原油先物と日本株が連動して買われる傾向がありました。しかし、もし世界経済の減速が鮮明になれば両方とも売られますし、逆に中東の有事で原油価格だけが急騰した場合、その連動性は崩れ、日本経済には「悪い物価高」として深刻な打撃を与えることになるでしょう。
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