2019年6月19日、法曹(弁護士、検察官、裁判官などの法律専門家)を目指す学生にとって大きな転機となる法科大学院改革の関連法が、参議院本会議で可決・成立いたしました。この法改正の目玉は、大学の法学部と法科大学院を合計5年間で修了できる「法曹コース」が創設されること。これにより、大学に入学してから法曹資格を得るまでの最短期間が、これまでの約8年間から一気に6年へと短縮されます。この制度変更は、時間的な負担や高額な学費といった経済的な負担を大幅に軽減し、近年志願者数の低迷に悩む法科大学院制度の再活性化を図る重要な一手となるでしょう。
新設される法曹コースは、2020年度からのスタートが予定されており、文部科学大臣の認定を受けた大学が設置できるようになります。基本的な履修モデルは大学2年次からで、現在大学1年生の学生が、この新しい制度の最初の対象者となる見込みです。コース生は、大学3年間で学部を卒業するとともに、法科大学院で学ぶべき基本科目を先取りして履修することで、法科大学院の「法学既修者コース」(通常2年間)へスムーズに進学できる仕組みです。
さらに、今回の新制度では、法科大学院に在学している間でも「修了見込み」の状態であれば司法試験の受験が認められるようになりました。これは、従来の制度と比べて資格取得までのスピードを格段に速めるものです。文部科学省の調査によれば、既に東京大学、一橋大学、慶應義塾大学など40校以上の大学がこのコースの設置に関心を示しており、学生への説明も進められているようです。また、法科大学院を持たない地方の大学が、都市部の法科大学院と連携してコースを設置するといった動きも見られるため、地域間の法曹養成の格差是正にも繋がる可能性を秘めていると言えるでしょう。
制度改革の背景と、予備試験との関係
法科大学院は、ピーク時には全国に74校が存在しましたが、修了者の司法試験合格率の低迷などを主な理由として志願者が減少し、廃止や募集停止が相次いでいます。結果、2020年度以降も学生募集を継続するのは35校にまで減少する見込みです。一方で、法科大学院を経由せずに司法試験の受験資格を得られる「予備試験」が、法曹への最も早いルートとして位置づけられ、出願者数が年々増加傾向にあります。
この法曹コースを順調に修了した場合、法曹資格を得るまでの期間は、大学4年次に予備試験に合格した場合と並び、最短の6年となります。一橋大学法科大学院の山本和彦教授は、「学生の経済的な負担が軽減されることは、法曹を目指す道を勧めやすくなるため評価できる」と、この制度を支持する意見を述べていらっしゃいます。
しかしながら、全ての関係者がこの新制度に楽観的な見方をしているわけではありません。ある司法試験予備校の関係者は、「多くの学生が予備試験と法科大学院の双方を視野に入れながら勉強を進めているため、どちらの道を選ぶか、今の段階では判断が難しい」と慎重な姿勢を見せています。また、弁護士志望の東京大学1年生の男子学生(20歳)からは「早く社会に出たいので、6年という期間でもまだ長く感じる」との声が上がっており、あくまで予備試験の合格を目指す考えを持っているようです。
SNSでの反響と、懸念される課題
この法改正のニュースに対して、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では様々な意見が寄せられています。「学費と時間が短縮されるのはありがたい」「これで優秀な人材が法曹を目指しやすくなるのでは」といった肯定的な意見がある一方で、「予備試験組との差が縮まるのか?」「法科大学院が単なる司法試験予備校のようになってしまうのではないか」といった懸念の声も上がっています。
特に、大学の学部と連携した一貫教育という形は、独立した法曹養成機関を目指して設立された法科大学院の当初の理念から大きく転換することになります。早稲田大学法科大学院の須網隆夫教授は、「司法試験予備校化が進んでしまう」と批判的な見解を示しており、この制度が持つ根本的な問題点を指摘しています。また、法学部出身ではない人が法曹を目指すための「未修者コース」(通常3年間)の存在感が薄れてしまうことへの懸念も出ており、今後の運用や成果が注視されます。
私個人の意見としては、この「法曹コース」の創設は、法曹を目指す方々の間口を広げ、かつ時間的・経済的な負担を減らすという点において、現在の法科大学院制度が抱える問題を解決する一歩となり得ると考えます。しかし、その一方で、教育の質の確保や、法科大学院が単なる試験対策機関とならないよう、本来の目的である実務に強い法曹の養成という視点を忘れないことが極めて重要であると強く感じる次第です。
コメント