長引く低金利環境のなか、地域の経済を支える地方銀行が大きな転換点を迎えています。2019年11月22日現在、九州・沖縄に本拠を置く地銀21行の決算から見えてきたのは、収益力が低下するなかで思うように進まない「経費削減」の現実です。日本銀行による異次元緩和の導入から7年が経過しましたが、この間の経費削減幅はわずか3.5%にとどまっており、効率化の難しさが浮き彫りとなっています。
SNS上では「地銀の店舗が減るのは困るけれど、経営が苦しいのも理解できる」といった複雑な声や、「ネット銀行に比べて手数料が高いのは効率が悪いからでは」という厳しい指摘も散見されます。地域インフラとしての役割と、一企業としての利益追求というジレンマに、多くの地銀が頭を悩ませている状況です。メガバンクのような大胆なリストラが進まない背景には、地域雇用を守るという使命感も影響しているのでしょう。
コスト削減の成功例とシステム投資の重圧
苦境の中でも、2018年02月から本部業務の抜本的な見直しに着手した佐賀銀行は、2019年09月01日時点で100名を超える業務削減を実現しました。坂井秀明頭取が「計画通り進んでいる」と手応えを語るように、店舗削減や外部への出向を通じて、2019年04月から09月期の経費を前年比5%も減らしています。筑邦銀行もスリム化に成功していますが、こうした例は全体で見ればまだ少数派といわざるを得ません。
皮肉なことに、経費が増加した銀行は減少した銀行の2倍にものぼります。その大きな要因が、銀行の心臓部である「基幹系システム」の更新費用です。これは預金や融資、為替といった銀行の基本業務を処理する巨大なITシステムのことで、その維持や開発には莫大な資金が必要です。2019年05月に共同システムへ加わった沖縄海邦銀行では、この負担により経費が15%も跳ね上がる結果となりました。
「規模の経済」が明暗を分ける銀行経営
銀行経営の効率性を測る指標に「OHR(オーバーヘッド・レシオ)」があります。これは、銀行が稼いだ粗利益に対して、どれだけの経費がかかったかを示す割合のことです。九州・沖縄21行の平均は75.7%と高く、全国平均の71%を大きく下回っています。銀行は「装置産業」としての側面が強く、規模が大きいほど1単位あたりのコストが下がるため、小規模な地銀が多いこの地域では効率化の壁が厚く立ちはだかっています。
実際に、総資産で圧倒する福岡銀行のOHRは51.5%と驚異的な低さを誇ります。一方で、小規模な地銀からは「すでに限界まで経費を削っている」という悲鳴にも似た声が漏れているのが実情です。私は、単なる節約だけではこの難局は乗り越えられないと考えています。従来の銀行業務に固執せず、地域の情報網を活かしたコンサルティングや、デジタル技術による徹底した自動化など、収益構造そのものを再定義する時期に来ているのです。
異業種との連携が切り拓く地銀の未来
現在は「手足を縛られた状態」と嘆く経営者も少なくありませんが、全国では新しい動きが加速しています。SBIホールディングスのようなフィンテック企業や、家電量販店のノジマといった異業種と手を組む地銀が登場しているのです。これまでの「地銀同士の経営統合」という枠組みを超えた、大胆な選択肢が現実味を帯びてきました。地銀が地域の灯を守り続けるためには、従来の常識を打ち破る発想が不可欠となるでしょう。
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