日本の空の玄関口として、物流の鼓動をダイレクトに反映する成田空港。その最新の貿易概況が2019年07月04日、東京税関より発表されました。5月の輸出速報値によれば、輸出額は7557億円と、前年同月と比較して16.2%もの大幅な落ち込みを見せています。これで7カ月連続の前年割れとなり、日本の輸出産業が今、大きな転換期を迎えていることが伺えるでしょう。
今回の下落の要因を深掘りすると、私たちの生活に欠かせない電子機器の分野で異変が起きていることが分かります。特に「電気計測機器」や、スマホ・家電の心臓部を作る「半導体等製造装置」の輸出が激減しました。ここで言う「半導体等製造装置」とは、極微細な回路をシリコン基板に焼き付けるための高度な機械のことです。こうしたハイテク分野の不振が、数字を大きく押し下げてしまいました。
また、情報の処理や記憶を司る小さな電子部品である「IC(集積回路)」の輸出も、19.4%という大きな減少幅を記録しています。SNS上では「世界的なデバイス需要のサイクルが変わったのではないか」「ハイテク景気の減速が如実に表れている」といった、今後の景気動向を不安視する声が散見されました。こうした精密部品の動きは、世界経済の先行指標とも言えるため、非常に注目度の高いポイントと言えます。
アジア市場の冷え込みと中国・ASEAN勢力の変化
地域別のデータに目を向けると、成田空港にとって最大の貿易圏であるアジア向けの輸出額が4727億円にとどまり、前年より15.2%も減少しました。とりわけ深刻なのは東南アジア諸国連合(ASEAN)向けで、36.0%減というショッキングな数字が出ています。これは、現地の製造工場に納品されるはずの半導体関連の装置が動かなかったことが、大きな足かせとなった格好です。
一方で、最大の貿易相手国である中国への輸出額は2241億円となりました。こちらは3.6%の減少に留まっていますが、電気回路をつなぐ重要なパーツである「コネクター」などの輸出が振るわず、3カ月ぶりにマイナスへと転じています。米中貿易摩擦の影が、成田空港という物流のハブを通じて、じわじわと日本の製造業にも波及している実態が浮き彫りになったと言わざるを得ません。
輸入に目を向けると、1兆689億円と前年比3.8%の減少となりましたが、興味深い動きも見られます。中国からの輸入額は、スマホなどの個人消費向け製品が好調だったことを背景に、10.9%の増加を見せているのです。高額な医薬品やICの輸入が減る一方で、私たちの生活に身近なモバイル機器の需要は根強く、輸入構造のバランスが刻一刻と変化している様子が読み取れるでしょう。
編集部としては、今回のデータは単なる数字の減少以上に、日本の得意とする「装置産業」の脆さが露呈した結果だと考えています。世界的なデジタルシフトが加速する中で、特定の部品需要に頼りすぎることのリスクを再認識すべき時が来ているのかもしれません。今後、新技術の台頭や国際情勢の変化が、この成田の空の便にどのような風を送り込むのか、引き続き注視していきたいと思います。
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