全国的に過熱する返礼品競争の裏側で、東京都内の自治体が新たな一手を投じています。2019年11月22日現在、注目を集めているのが「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」という手法です。これは自治体が特定のプロジェクトを立ち上げ、その趣旨に賛同する人々から小口の寄付を募る仕組みを指します。通常のふるさと納税とは異なり、自分の納めた税金が「何に、どう使われるのか」が明確になる点が、現代の寄付者の心に強く響いているようです。
品川区では2019年9月から、区内の子ども食堂の運営やひとり親家庭への食品配送を目的としたCFを開始しました。当初は年末までの期間で300万円を目標としていましたが、予想を大きく上回るスピードで、わずか1ヶ月という短期間で目標額に到達したのです。三ツ橋悦子子ども家庭支援課長も、この驚異的な反応には驚きを隠せません。「目標に届かなければ十分な支援ができなかったかもしれない」という不安を払拭する結果に、確かな手応えを感じている様子です。
可視化される税の使途と広がる共感の輪
SNS上では、この動きに対して「具体的な支援先が見えるなら、積極的に応援したい」「返礼品よりも活動内容で選びたい」といった、制度の本質を問う声が目立ち始めています。仲介サイト「ふるさとチョイス」の運営元であるトラストバンクによると、都内自治体によるCFの件数は2015年の3件から、2019年には20件へと6倍以上に急増しました。これまでの「教育」や「街づくり」といった漠然とした項目ではなく、活動の輪郭がはっきり見えることが寄付を後押ししています。
例えば墨田区は、2015年から2019年にかけて「すみだ北斎美術館」の運営に関連するプロジェクトを21回も実施してきました。2019年11月20日時点で約7億6000万円という多額の資金を集めることに成功しています。同区は、この取り組みが資金調達だけでなく、美術館の存在を全国へ発信するPR効果にも繋がっていると分析しました。単なる税収の確保を超えて、地域のファンを増やすマーケティングツールとしての役割も果たしているといえるでしょう。
流出する税収への対抗策としての期待
都内自治体がこれほどまでにCFに力を入れる背景には、切実な事情も隠されています。品川区では2019年度に約23億円の税収が区外へ流出すると予測されており、この「目減り」を少しでも食い止めたいという切実な願いがあるのです。板橋区もまた、返礼品競争とは一線を画す姿勢を示しつつ、児童養護施設の卒園者支援プロジェクトで目標を大きく超える615万円を集めました。社会的意義の高い事業こそが、都市部における生き残り戦略となっています。
私は、この「共感型寄付」へのシフトこそが、本来のふるさと納税があるべき姿だと確信しています。モノで釣るのではなく、自治体の志に投資する文化が定着すれば、単なる損得勘定を超えた地域との絆が生まれるはずです。2019年6月の制度改正により返礼品に厳しい制限がかかった今、自治体には「いかに魅力的なストーリーを描けるか」が問われています。住民側もまた、自分たちの税金が活かされる瞬間を厳しく、かつ温かく見守る視点が必要でしょう。
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