世界中の投資家たちが今、企業の在り方を厳しく見つめ直す新たな局面を迎えています。これまでの利益至上主義から一歩進み、格差拡大が社会や資本主義そのものを揺るがす「システミックリスク」として認識され始めました。例えば、イギリスでは2018年07月に企業統治指針が改定され、正社員だけでなく現場で働くすべての人々への配慮が取締役に求められるようになっています。
こうした世界的なうねりの中で、日本でも2020年04月01日から「同一労働同一賃金」の制度が幕を開けます。これは、正社員と非正規社員の間にある不合理な待遇の差を解消しようとする画期的な取り組みです。SNS上でも「ようやく非正規の努力が報われるのか」「企業の負担が増えて倒産しないか」といった期待と不安が入り混じった声が数多く寄せられており、国民の関心の高さが伺えます。
司法が投げかける一石と企業の重い説明責任
厚生労働省のガイドラインでは、経験や貢献度に応じた賃金の差は認められていますが、その境界線は依然として不透明なままです。しかし、2019年02月には司法が踏み込んだ判断を示しました。大阪高裁がアルバイト職員への賞与支給を命じ、東京高裁でも契約社員への退職金支払いを一部認める判決が出たのです。これは、非正規という理由だけで大きな差をつける慣習に、法が明確な疑問を突きつけた瞬間と言えるでしょう。
新制度の導入により、企業には「なぜ賃金に差があるのか」を論理的に説明する義務が課せられます。もし曖昧な回答しかできなければ、その企業の人材管理は不適切であると見なされ、投資家からの評価を大きく下げることになりかねません。私は、この「説明責任」こそが、日本の閉鎖的な雇用慣行を打破し、透明性の高い組織へと脱皮するための試金石になると考えています。
処遇改善を「コスト」から「攻めの投資」へ
投資家が最も注目しているポイントは、単なる人件費の増大ではなく、それがどう「生産性の向上」に結びつくかという点です。非正規社員の待遇を改善することが、働く人のモチベーションを高め、最終的に企業の収益力をどう強化するのかというストーリーが求められています。もはや、あやふやな理由で正社員を厚遇し続けるだけでは、グローバルな市場での競争には勝ち残れない時代が来ているのです。
2019年09月の調査によれば、まだ多くの日本企業が抜本的な制度改革には慎重な姿勢を見せています。しかし、これはピンチではなく、投資家を味方につける絶好のチャンスではないでしょうか。職務内容と報酬の関係を明確にし、誰もが納得できるルールを構築することこそが、令和の時代に求められる経営のスタンダードです。今こそ、企業の真の価値が問われる「変革の時」なのです。
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