情熱的なサンバやサッカーのイメージが強いブラジルですが、その国旗には「秩序と進歩」という崇高な理想が刻まれています。2019年01月01日、このスローガンを胸に第38代大統領として就任したのがジャイル・ボルソナロ氏です。軍人出身の彼は「小さな政府」を掲げ、大胆な経済改革による国家の再建を誓いました。
SNS上では、彼の過激な言動を危惧する声がある一方で、長年の腐敗政治を打破してくれるのではないかという期待感も渦巻いています。ボルソナロ氏は、複雑すぎる税制の簡素化や国営企業の民営化を打ち出し、投資家にとって魅力的な国へと変貌させるべく、経済のエキスパートであるゲジス氏を経済相に迎えて舵取りを任せました。
着実に進む構造改革と外交の進展
政権発足から10カ月が経過した2019年11月現在、内政面では確かな成果が見え始めています。特に注目すべきは、長年の懸案事項であった年金改革法案が上下院で可決されたことです。これは、受給年齢を引き上げることで深刻な財政赤字を解消しようとするもので、将来の経済安定に向けた大きな一歩と評価できるでしょう。
また、インフラ整備においては「コンセッション方式」が積極的に導入されています。これは、道路や空港などの公共施設の運営権を民間企業に売却し、民間の資金やノウハウを活用してサービスを向上させる仕組みです。この戦略的な方針転換により、ブラジルの市場開放は着実に進み、国際社会での存在感を高めています。
外交面でも、2019年06月には南米南部共同市場(メルコスル)と欧州連合(EU)の間で、悲願であった自由貿易協定(FTA)の合意に漕ぎ着けました。さらに、経済の「先進国クラブ」とも称される経済協力開発機構(OECD)への加盟についても、アメリカのトランプ大統領から支持を取り付けるなど、追い風が吹いているように見えます。
急落する支持率とアマゾン火災が落とす影
しかし、輝かしい成果の裏で暗雲も立ち込めています。2019年09月には、発足当初に49%あった支持率が31%まで急落しました。その要因の一つが、世界中から非難を浴びたアマゾンの森林火災への対応です。消火活動に消極的だったボルソナロ氏の姿勢は、環境保護を重視する国際社会との間に深い溝を作ってしまいました。
「ブラジルのトランプ」と称される彼の過激な物言いや、過去の軍事独裁政権を肯定するような発言も、国民の間に不安を広げています。当初は2.5%と期待されていた2019年の経済成長率の見通しも、世界的な景気減速の影響を受け、0.9%程度にまで落ち込む予測となっています。国民が新政権を無条件に支持する「ハネムーン期間」は、今まさに終わりを迎えたのです。
私は、ブラジルが真に「秩序と進歩」を体現するためには、目先の数値目標だけでなく、多様性を尊重する姿勢が必要だと考えます。多くの政党が乱立するブラジル議会で政策を安定させるには、独善的ではない対話の姿勢こそが求められるでしょう。この難局を乗り越え、真に魅力的な投資先として返り咲くことができるのか、ボルソナロ政権は今、最大の正念場に立っています。
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