東南アジアのエネルギー市場を牽引するインドネシアから、国家の根幹を揺るがすような驚きの人事が発表されました。国営石油最大手のプルタミナは、2019年11月25日、新たな監査役会の会長としてジャカルタ特別州の前知事であるバスキ・チャハヤ・プルナマ氏を正式に起用したのです。
「アホック」の愛称で親しまれるバスキ氏は、かつてジャカルタ州知事として行政の無駄を徹底的に排除し、数々の既得権益に切り込んできた稀代の改革者として知られています。今回の人事は、その圧倒的な突破力を評価し、巨大国営企業の「膿」を出し切ることを目的としているのでしょう。
ネット上では早くも「最強の助っ人が来た」「これまでの癒着がなくなるのを期待したい」といった期待の声が上がる一方で、その妥協を許さない姿勢に反発を懸念する意見も見られます。しかし、停滞する組織に一石を投じるには、彼のような劇薬とも言える人物が必要不可欠だったのかもしれません。
「国家の中の国家」にメスを入れる監査役会の強力な権限
ここで注目すべきは、インドネシアにおける「監査役(コミサリス)」という役職の重みです。日本の監査役とは異なり、同国では経営の監督や助言に留まらず、必要に応じて取締役を解任する権限まで認められています。まさに、経営陣を背後から監視する強力な番人といえる存在です。
プルタミナは2018年の売上高が579億ドル、日本円にして約6兆2000億円という巨額の利益を誇るマンモス企業ですが、かつては「国家の中の国家」と称されるほど不透明な支配体制が続いていました。石油取引の裏で政治家が利権を貪る実態は、長年の深刻な社会問題でもあります。
2014年の大統領選挙で「石油マフィアの追放」を公約に掲げたジョコ・ウィドド大統領にとって、かつて副知事として自身を支えたバスキ氏を送り込むことは、改革の総仕上げとも言える一手です。私は、この人事がインドネシアの透明性を国際社会にアピールする絶好の機会になると確信しています。
長年放置されてきた汚職という病根は、一朝一夕に治るものではありません。しかし、バスキ氏の持つ鋼の意志とジョコ大統領の信頼関係があれば、プルタミナが真にクリーンな企業へと生まれ変わる日も遠くないはずです。アジアのエネルギー情勢を変えるかもしれないこの挑戦を、固唾を飲んで見守りましょう。
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