2019年11月18日にスリランカの新たなリーダーとして就任したゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が、最初の外遊先としてインドを選んだことが大きな注目を集めています。2019年11月29日に予定されているこの訪問は、隣国インドとの緊張を和らげるための重要なステップといえるでしょう。大統領がこれほど早い段階で隣国を訪れる背景には、自身の政権が過度に中国へ寄り添うのではないかという国際社会の強い警戒感があるためです。
2019年11月21日には、大統領の実兄であるマヒンダ・ラジャパクサ氏が首相に就任し、強力な兄弟体制が確立されました。マヒンダ氏はかつて大統領を務めていた際、中国から巨額の資金を引き出し、インフラ整備を強行した経歴を持ちます。この動きに対してSNS上では、「再び中国への依存が強まるのではないか」「インド洋の勢力図が塗り替えられる」といった、地政学的なリスクを懸念する声が数多く上がっているのが現状です。
「債務の罠」という教訓とインド洋の緊張
ここで注目すべきは、マヒンダ氏が過去に進めた開発が招いた「債務の罠」という問題でしょう。これは、途上国が返済能力を超える借金を負い、返済が滞った結果として港などの重要拠点の権益を貸し出さざるを得なくなる状況を指します。実際に南部のハンバントタ港は、2017年に99年間にわたって中国企業に運営権が譲渡されました。国家の主権に関わる拠点が他国の管理下に置かれる事態は、まさに現代の経済的な攻防戦といえます。
かつてマヒンダ政権下で中国の潜水艦がコロンボ港に寄港した際には、安全保障上の脅威を感じたインドが激しい不快感を示しました。当時の対立を知る人々からは、今回の兄弟返り咲きによって再び軍事的な緊張が高まることを危惧する意見も散見されます。一方で、ゴタバヤ大統領は就任の際、特定の国に偏らない「等距離外交」を掲げました。これは、中国とインドという二つの巨人の間でバランスを保とうとする、非常に高度な政治的舵取りが求められる戦略です。
日本にとっても、この地域の動向は決して他人事ではありません。2015年に誕生した前政権は行き過ぎた中国依存を修正し、日本やインドと連携して港湾開発を進める方針を採っていました。編集者としての視点では、新政権が過去の教訓を活かし、真にスリランカの自立に資する外交を展開できるのかが最大の焦点だと考えます。目先の巨額融資という「甘い誘惑」と、中長期的な国家の安全保障を天秤にかける、極めて難しい局面が続くと予想されます。
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