日本の食卓を支える外食チェーンや食品業界が、今まさに大きな岐路に立たされています。一般社団法人日本フードサービス協会(JF)をはじめとする食品関連の7つの団体が、2019年11月21日に短時間労働者に対する社会保険の適用拡大に反対する共同声明を発表しました。同日に東京都内で開催された決起集会には、業界の未来を憂慮する関係者ら約550名が詰めかけ、会場は熱気と緊張感に包まれていたようです。
そもそも社会保険の適用拡大とは、パートやアルバイトといった短時間で働く方々に対し、厚生年金や健康保険への加入を義務付ける範囲を広げる仕組みを指します。現在は主に企業規模や月収、勤務時間によって加入条件が決まっていますが、この基準が引き下げられることで、より多くの労働者が保険料を支払う必要が出てくるのです。働く側の将来の保障が手厚くなるという利点がある一方で、現場からは切実な反対の声が上がっています。
深刻化する人手不足と「働き控え」のジレンマ
今回の反対声明の背景には、外食産業が直面している極めて深刻な人手不足の問題が潜んでいます。社会保険料の負担を避けるために、パートタイマーの方々が年収を一定額以下に抑えようとする、いわゆる「働き控え」が発生することを業界団体は最も危惧しているのです。これは一定の収入を超えると手取りが減ってしまう「年収の壁」と呼ばれる現象であり、労働時間がさらに短縮されることで、店舗運営が立ち行かなくなる恐れがあるのでしょう。
SNS上でもこのニュースは大きな話題となっており、「保険料を払うと生活が苦しくなるから、働く時間を減らすしかない」という切実な投稿や、「ただでさえ人が足りないのに、シフトが回らなくなったらお店が潰れてしまう」といった現場の悲鳴が目立ちます。将来的な社会保障の安定という理想と、今目の前にある生活や経営の維持という現実との間で、激しい議論が巻き起こっているのが2019年11月現在の状況と言えるでしょう。
私個人の見解としては、働く人々の権利を守る社会保障の充実はもちろん重要ですが、現場の運営に過度な負荷をかける急進的な改革には疑問を感じざるを得ません。外食文化は日本の誇りであり、人々の憩いの場でもあります。小手先の適用拡大ではなく、業界側が訴えるように、社会保障制度そのものの抜本的な見直しや、生産性を高めるための支援策を同時に議論することが、持続可能な社会を作るための唯一の道ではないでしょうか。
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