2019年11月12日、オフィス家具大手の2020年度に向けた戦略が出そろいました。年度末の需要期を控える中、コクヨやオカムラといった業界リーダーたちが提示したのは、単なる事務机や椅子の提供にとどまらない、働く人の「体験」そのものをデザインする攻めの姿勢です。
SNSでは「会社がキャンプ場みたいになったら楽しそう」「座りすぎを解消してくれる椅子は本当に欲しい」といった、新しいオフィス環境への期待感が早くも高まっています。従来の無機質なオフィスから、五感を刺激する人間らしい空間への転換期が、まさに今訪れようとしているのです。
コクヨが仕掛ける「オフィスでアウトドア」の衝撃
コクヨが打ち出したのは「be Unique アタマ・ココロ・カラダ」という、心身の健康に焦点を当てた野心的なコンセプトです。日本人の「座りすぎ」という現代病に対し、家具を通じて解決策を提示する試みで、身体的な負荷を減らすだけでなく、脳のパフォーマンス向上や感情の活性化までを視野に入れています。
その象徴とも言えるのが、新ブランドの「inGREEN(イングリーン)」でしょう。これはオフィス内にアウトドアの要素を大胆に取り入れる試みで、ウッドデッキをイメージしたデスクや、空間を仕切るテントのような白い布が特徴です。野外にいるような開放感の中で仕事をすることで、創造性を引き出す狙いがあると言えるでしょう。
私自身の視点としても、この「あえて非日常を取り入れる」手法は、テレワークやサテライトオフィスが普及する中で、リアルなオフィスに来る価値を再定義する素晴らしいアプローチだと感じます。仕事場が単なる作業場から、クリエイティビティを養う場所へと進化するのは必然の流れではないでしょうか。
フリーアドレスを加速させるオカムラの「トライブ」戦略
一方でオカムラは、2020年度のテーマに「Shall we TRIBE?」を掲げました。ここで使われている「トライブ(部族)」という言葉は、同じ目的や志を持つチームを意味しています。特定の座席を決めない「フリーアドレス」が普及する中で、流動的なチームがどう団結するかを追求した結果です。
注目すべきは2020年1月に発売予定の新製品「ワゴン」です。これは移動式の収納家具でありながら、仕事中には自分専用のキャビネットとしても機能する優れものです。荷物を持って席を移動する際の心理的・物理的な障壁を取り除くことで、よりスムーズな働き方を支援してくれます。
フリーアドレスは一歩間違えると「居場所がない」という感覚を生みかねませんが、こうした道具が個人の拠点として機能することで、自由と帰属意識が両立できるはずです。専門用語としての「フリーアドレス」も、今や単なるコスト削減ではなく、組織の柔軟性を高める戦略として定着しています。
昇降デスクがスマホと連動?ITを駆使するイトーキと内田洋行
イトーキは、ワーク(Work)の先を行くという意味を込めた造語「XORK(ゾーク)」をテーマに設定しました。特筆すべきは、スマートフォンアプリと連動する昇降デスクです。設定した時間になると自動で天板が上昇し、強制的に立ち仕事へと切り替えることで、ワーカーのリフレッシュを促します。
さらに内田洋行も、2019年11月12日から「座りっぱなしを防ぐ」働き方の発表会を都内で開催するなど、業界全体が「脱・固定化」に動いています。これはオフィスビル供給の減少が予測される中で、単なる箱(物件)の数ではなく、中身(コンテンツ)の質で勝負しようという各社の危機感の表れでもあるでしょう。
働き方改革が叫ばれる今、家具はもはや備品ではなく、企業の生産性を左右する「インフラ」へと格上げされました。健康への配慮やITとの融合は、優秀な人材を確保し続けるための必須条件になることは間違いありません。各社が提案するこれらの新スタイルが、私たちの日常をどう変えるのか楽しみですね。
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