世界的な景気回復への期待感を背景に、2019年の日本株は年初来高値圏を維持する好調な動きを見せています。しかし、この上昇相場が今後も長く続くかどうかについては、市場関係者の間で慎重な意見が広がり始めました。一見すると投資家の買い対象が電子部品や機械、化学へと広がっているように見えますが、その実態を詳しく紐解くと、実は「半導体に関連する銘柄」だけがピンポイントで買われている特殊な状況が浮かび上がってきます。
例えば、シリコンウエハーで世界首位を走る信越化学工業は、2019年11月6日に付けた高値から既に6%も下落しています。このように、特定の狭い範囲内だけで資金が回る「循環物色」には、自ずと限界が訪れるものです。実際、2019年11月14日の東京株式市場では、日経平均株価が前日比178円安と下落する中で、SUMCOや東京エレクトロンといった半導体関連株は逆行高となりました。しかし、これらも10月下旬の高値を更新するほどの勢いは感じられません。
一般的に、景気が良くなると予想される際、最も早く反応するのが半導体を起点としたハイテク分野です。その後、少し遅れて産業用ロボットなどを製造する「機械セクター」に買いが波及するのが投資の王道パターンとされています。2019年3月末と比較すると、精密機器が19%、電気機器が15%上昇しているのに対し、機械は9%の上昇に留まっていました。理論上はこれから機械株に大きな伸び代があるはずですが、現実はそう甘くはないようです。
機械や化学に波及しない「選別投資」の厳しさ
運用のプロである機関投資家からは、機械株全般を買い進める動きは鈍いという声が漏れ聞こえます。機械セクターの中でも、スマートフォンの製造ラインに不可欠な精密減速機を手掛けるハーモニック・ドライブ・システムズや、空気圧機器のSMCといった「スマホ・半導体寄り」の銘柄だけが選ばれているのが現状です。一方で、自動車業界向けがメインとなるファナックやナブテスコなどの株価は、芳しい結果を残せていません。
本来、本物の景気回復局面であれば、部品を供給する「サプライチェーン」を遡り、上流工程にある化学セクターなどへも広く買いが広がるはずです。しかし、現状で買われているのは半導体用ウエハーで強い価格支配力を持つ企業や、特殊な部材に強みを持つJSRなど、ごく一部の銘柄に限定されています。サプライチェーンとは、製品の原材料調達から製造、販売、消費者の手に渡るまでの一連の流れを指しますが、この流れ全体に活気が戻っているとは言い難い状況です。
SNS上では「半導体だけ上がっても実体経済が伴っていない気がする」「いつ梯子を外されるか不安」といった、個人投資家の切実な声も散見されます。投資家の生永正則氏が指摘するように、現在の株高は景気循環によるものではなく、次世代通信規格「5G」という明確な材料がある特定の場所にお金が集まっているだけに過ぎないのかもしれません。5Gは超高速・大容量の通信を可能にする技術ですが、これだけが相場の支えになっている点には注意が必要です。
私自身の見解としても、現在の相場は非常に危ういバランスの上に成り立っていると感じます。日経平均株価をTOPIXで割った「NT倍率」が、27年ぶりの高水準である13.8倍台に近い13.7倍台で高止まりしている事実は、物色の偏りを如実に物語っています。12月には米中貿易摩擦による対中制裁関税「第4弾」の発動リスクも控えており、もし半導体関連の勢いが止まれば、市場全体が冷え込む恐れがあります。今はまだ「直径300ミリのウエハー」に依存した相場であることを肝に銘じるべきでしょう。
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