今、日本が世界に誇る独自の食文化「なごやめし」が、海を越えて熱狂的な支持を集めているのをご存知でしょうか。かつては個性的すぎると言われた名古屋特有のグルメが、インバウンド需要の高まりを経て、今や世界各地で「本場の味」として定着し始めています。2019年11月21日現在の状況を紐解くと、中部地方の外食企業が次々と海外へと舵を切り、大きな成功を収めている様子が鮮明に浮かび上がってきます。
特に注目すべきは、2019年8月に台湾・台北市へ進出した「コメダ珈琲店」の快進撃です。共働き家庭が多く、外食での朝食文化が根付いている台湾において、飲み物を注文すると無料でパンが付いてくる名古屋伝統の「モーニングサービス」が驚きをもって迎えられました。1店舗あたりの月間売上高は約1,050万円に達し、日本国内の平均を上回る異例の数字を叩き出しています。SNSでも「日本と同じ体験ができる」と大きな話題を呼びました。
コメダ珈琲店は、この成功を足掛かりに2022年までに50店舗体制を目指すという、非常に強気な拡大戦略を描いています。私は、この「お値打ち感」こそが名古屋流の真髄だと考えています。単に安いだけでなく、ボリュームやサービスの質を含めたトータルでの満足度を提供することが、価値に厳しい海外の消費者にもしっかりと伝わっているのでしょう。独自の文化が普遍的な価値へと昇華した瞬間と言えるかもしれません。
「そのままの味」が勝機を掴む!手打ちそばと手羽先の挑戦
続いて目を引くのが、タイ・バンコクで「サガミホールディングス」が提供する日本そばです。現地価格で約1,300円という、現地の物価からすれば高級な設定ながら、職人が打つ本格的なそばが食べ放題という贅沢さが受けています。また、手羽先で有名な「世界の山ちゃん」も香港やマレーシアで着実にファンを増やしており、赤味噌をはじめとした「濃厚でスパイシーな味付け」が東南アジアの食習慣に見事にマッチしているようです。
かつての海外進出といえば、現地の好みに味を寄せる「現地化」が主流でした。しかし、現在の中部企業が貫いているのは、あくまで「名古屋そのままの味」を守ることです。これは、インバウンドを通じて本場の味を知ったファンが増えたからこそ成立する、新しい時代の戦略だと言えるでしょう。SNSでの拡散力も味方につけ、偽物ではない「リアルな日本食」を求める層の心を掴んでいるのは、マーケティングの観点からも非常に理にかなっています。
少子高齢化によって国内市場が成熟し、飽和状態にある中で、中部の外食企業が見せるこの攻めの姿勢は、日本経済全体にとっても明るいニュースです。「なごやめし」という一つの地域ブランドが、そのプライドを捨てずに世界を席巻する姿は、地方創生の新たなモデルケースになるのではないでしょうか。独自の文化という底力を武器にした彼らの挑戦は、まさに今、世界という巨大な市場で本格的な幕を上げたばかりなのです。
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