現代社会において、理不尽な要求や悪質なクレームで従業員を追い詰める「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻な社会問題となっています。こうした状況を打破すべく、北海道大学発のスタートアップ企業であるティ・アイ・エル(TIL)が、画期的な対策システムを世に送り出しました。
2019年11月27日に発表されたこのシステムは、営業現場での会話をリアルタイムで文章化し、トラブルの予兆をAI(人工知能)が検知するというものです。密室になりがちな訪問先でのやり取りを「見える化」することで、孤独な環境で働く営業担当者を強力にバックアップします。
仕組みは非常にシンプルで、担当者が顧客の承諾を得てボイスレコーダーを作動させると、スマートフォンアプリを通じて音声データがサーバーへ送られます。ここで注目すべきは、事前に設定した「禁止語句」や「大声」をAIが即座に判別し、異常があれば本部に自動通報する点でしょう。
SNS上では「言った言わないのトラブルを防げるのは心強い」「営業職の心理的負担が軽くなるはず」といった、テクノロジーによる自衛を歓迎する声が目立ちます。もはや個人の我慢に頼る時代ではなく、システムで組織的に守る時代が到来したといえるのではないでしょうか。
このシステムはコスト面でも合理的です。会話が3秒以上途切れると自動で録音を停止し、実稼働時間に基づいた課金が行われます。例えば、10人が1日1時間の利用を20日間続けた場合、月額料金は90,000円程度に収まり、企業の安全管理コストとしては非常に現実的な設定です。
すでに札幌市の不動産仲介会社や、水回り修理のアクアライン社などで導入が始まっています。2019年3月から試験導入しているアクアライン社によれば、顧客が録音を拒否するケースは3%以下に留まっており、現場への浸透もスムーズに進んでいる様子が伺えます。
私自身の見解としても、こうしたデジタル技術によるエビデンス(証拠)の確保は、公正な取引環境を作るために不可欠だと考えます。ハラスメントを未然に防ぐ抑止力として、また誠実に働く人々を守る盾として、この「AIの耳」は多くの業界で標準装備となっていくでしょう。
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