日本の物流を支える「海」の景色が、いよいよ劇的な変化を遂げようとしています。商船三井や三菱商事などが設立した「e5ラボ」は、ソフトバンクと強力なタッグを組み、2019年11月28日に画期的な海上通信サービスの展開を発表しました。このプロジェクトは、イギリスの通信衛星企業であるワンウェブ社の衛星網を活用し、2021年を目途に国内を航行する内航船へ専用アンテナを提供することを目指しています。
これまで海の上は、陸上に比べて通信環境が10年以上遅れていると言われてきました。従来の静止衛星による通信は速度が非常に遅く、船の位置情報を把握するのにも分単位の時間を要していたのが実情です。しかし、今回の新サービスが導入されれば、通信規格「4G」を凌駕するスピードが実現し、位置情報の更新も秒単位へと劇的に進化します。SNS上では「ついに海の上でもYouTubeが快適に見られるのか」といった期待の声が早くも上がっています。
遠隔操船の実現で深刻な人手不足に終止符を
この超高速通信がもたらす最大の恩恵は、船を陸上からコントロールする「遠隔操船」の実現に道が開けることでしょう。現在、船舶業界では深刻な労働力不足が大きな課題となっており、業務の省人化は急務とされています。大容量のデータをリアルタイムでやり取りできれば、船上の映像やセンサー情報を陸上のオペレーターが即座に確認し、安全にナビゲートすることが可能になります。これは、まさに海におけるデジタルトランスフォーメーションです。
ここで鍵となる「内航船」とは、日本の港と港の間だけで荷物を運ぶ国内専用の船を指します。日本国内の物流において重要な役割を担っていますが、その多くは中小の船主によって支えられており、最新設備の導入が遅れがちな側面もありました。今回のサービスでは、月額数万円程度の利用料で高度な通信環境が手に入る見込みとなっており、約5000隻におよぶ国内すべての内航船への普及を視野に入れている点は非常に野心的です。
さらに、このインフラが整えば付随する新しいビジネスも生まれるでしょう。例えば、衛星が捉えた最新の気象データと、船が撮影したリアルタイムの波の映像を高度なアルゴリズムで解析すれば、今までにない精度での「気象予測サービス」が提供可能になります。私は、こうしたデータの積み重ねが事故を未然に防ぐだけでなく、燃料消費を抑える最適ルートの選定にも繋がり、環境負荷の低減に大きく寄与すると確信しています。
ソフトバンクの通信技術と、商船三井が培ってきた船舶運航のノウハウが融合することで、日本の海運業は世界をリードする「スマート産業」へと生まれ変わるはずです。単なる通信手段の確保に留まらず、海上の安全と効率を根本からアップデートしようとするこの取り組みには、大きな期待を禁じ得ません。未来の海では、AIと人間が陸と海で連携し、静かに、そして力強く荷物を運ぶ姿が当たり前になっていることでしょう。
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