自然豊かな農山村を悩ませる深刻な課題に、最新のテクノロジーが光を投げかけています。ソフトバンク株式会社は信州大学やハンテック株式会社と手を取り合い、2019年11月19日、長野県伊那地域において野生鳥獣の捕獲を支援する革新的な実証事業を開始したことを発表しました。
今回投入されるのは、鳥獣がワナに掛かった瞬間に通知を送る「スマートトラップ NB-IoT」という最新鋭のセンサーです。このプロジェクトは、日々田畑を荒らすシカやイノシシへの対策に追われる農家や猟友会の救世主として、SNS上でも「これで見回りの苦労が減る」「地方の課題解決に通信大手が動いた」と大きな注目を集めています。
驚異の電池寿命を実現した「NB-IoT」の正体とは?
このセンサーの最大の特徴は、驚くべき省電力性能にあります。従来の機器では頻繁な電池交換が現場の大きな負担となっていましたが、新システムでは単3形乾電池わずか4本で、3カ月以上もの長期間稼働が見込まれています。これを支えているのが、ソフトバンクが誇る通信規格「NB-IoT」という技術です。
NB-IoT(Narrowband IoT)とは、身の回りのあらゆるモノをインターネットに繋ぐために開発された、低消費電力かつ広範囲をカバーする通信方式のことです。一度に送るデータ量をあえて絞ることで、スマートフォンのような高速通信はできませんが、山間部などの電波が届きにくい場所でも効率よくデータを飛ばすことが可能になります。
今回の仕組みは非常にシンプルかつ合理的です。猟友会のメンバーが仕掛けたワナと木に固定したセンサーを紐で連結し、獲物が掛かって紐が引かれるとセンサーが作動します。瞬時に位置情報や発生時刻がメールで通知され、スマートフォンなどの地図上で状況を確認できるため、迅速な対応が期待できるでしょう。
高齢化が進む狩猟現場の「見回り」負担をテクノロジーで解消
実証実験が行われている伊那地域の現場では、切実な声が上がっています。信州大学農学部の渡辺修准教授によると、ハンターの高齢化により、広大な山中に設置したワナを毎日見回ることが体力的にも時間的にも厳しくなっているのが現状です。獲物が掛かっていないのに山を歩き回る労力は、想像を絶するものがあります。
しかし、このセンサーを活用すれば、獲物が捕らえられた時だけ現場へ向かえば良くなります。これは単なる効率化ではなく、地域の守り手である猟友会の活動を持続可能にするための必須条件だと言えるでしょう。2020年3月まで実施されるこの試験で10台前後のデバイスが稼働し、実際の通信環境や消費電力が厳密に検証されます。
私自身の考えとしましては、こうした「現場の泥臭い課題」にこそIoT技術の真骨頂があると感じています。華やかな都市部のサービスも魅力的ですが、農村の静かな暮らしを守るために最先端の電波が飛ぶという構図には、技術の温かみを感じずにはいられません。実証が成功し、2020年春に予定されている一般販売が始まれば、日本の農業の未来はより明るいものへと変わるはずです。
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