愛媛県がいま、地域医療の存続を揺るがす大きな正念場に立たされていることをご存じでしょうか。医師不足の波は一段と激しさを増しており、私たちの命を守る救急医療の維持すら危うい状況が続いています。医療機関の経営を安定させつつ、いかにして質の高い医療を提供し続けるか。2019年11月28日、愛媛県医師会の村上博会長が、現状打破に向けた具体的な戦略を語ってくださいました。
SNS上では「地元に産婦人科がなくて不安」「夜間の救急が受け付けてもらえなかった」といった切実な声が溢れています。村上会長は、県全体の医師数自体は決して過小ではないものの、松山市への極端な集中が問題であると指摘します。特に島しょ部や山間部では、保険料を支払っているにもかかわらず、身近に受診できる医療機関が存在しないという極めて深刻な事態が2019年現在、現実のものとなりつつあるのです。
ベテラン医師の知見を地域へ!セカンドキャリア支援の可能性
この負のスパイラルを断ち切るため、愛媛県医師会が注目しているのが「医師のセカンドキャリア」です。これは大学病院や地域の基幹病院を定年退職した熟練の医師たちに、再び地域医療の現場で活躍してもらうための支援策です。豊富な経験を持つ医師の能力を、求職ニーズと積極的にマッチングさせることで、不足する現場のマンパワーを補う画期的な試みとして期待を集めています。
国は2030年には医師数が飽和状態になると予測していますが、愛媛県独自の試算では2036年までに659人もの医師が不足するという衝撃的なデータが出ています。村上会長は、単に数を追うだけでなく、女性医師がライフステージに合わせて働き続けられる職場環境の整備や、若手医師が学びやすい研修環境を整えることが、長期的な解決には不可欠であると説いています。
救急医療を守るための「適正受診」と病院の賢い再編
最も脆弱な部分から崩壊が始まるとされる医療現場において、救急医療の維持は喫緊の課題です。特に小児科医の疲弊は深刻で、地域から専門医が消えれば子供たちの未来が脅かされます。ここで重要になるのが、私たち住民側の意識改革です。不要不急の夜間受診を控え、昼間の診療時間内に「かかりつけ医」を受診するという「適正受診」の徹底こそが、救急体制を守るための鍵となるでしょう。
さらに、人口減少社会に適応するための「地域医療連携推進法人」の構想も進んでいます。これは複数の病院が役割を分担し、ある病院は急性期(急病の治療)、別の病院は回復期(リハビリなど)に特化する仕組みです。医療資源を集約して効率化を図るこの動きは、地域の医療機能を守るための現実的な処方箋と言えます。病院をただ「減らす」のではなく「最適化する」視点が、今の愛媛には求められています。
昨年の西日本豪雨という未曾有の災害を経て、医療チーム間の連携の重要性も再認識されました。私は、村上会長が掲げる「組織の枠を超えた連携」こそが、地方都市が抱える医療不安を解消する唯一の道だと確信しています。医師不足という難題に対し、行政、医師会、そして私たち住民が一丸となって向き合うべき時が来ているのです。
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